大領(読み)オオクビ

デジタル大辞泉 「大領」の意味・読み・例文・類語

おお‐くび〔おほ‐〕【大領/×衽】

ほう直衣のうし狩衣かりぎぬなどの前襟おくび

たい‐りょう〔‐リヤウ〕【大領】

《「だいりょう」とも》
律令制で、郡司長官。こおりのみやつこ。おおきみやつこ。
大国領主
「天が下を掌握し、四海に羽打つ―なれど」〈浄・三日太平記〉

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精選版 日本国語大辞典 「大領」の意味・読み・例文・類語

おお‐くびおほ‥【大領・衽・袵】

  1. 〘 名詞 〙
  2. (ほう)狩衣(かりぎぬ)などの首のまわりを囲むようにつくった前えり。盤領(まるえり)の前襟の称。登(のぼり)。おおくみ。〔十巻本和名抄(934頃)〕
  3. 方領(ほうりょう)の制の直垂・大紋などの襟の称。おおくみ。
    1. [初出の実例]「褐(かち)に赤地の錦(にしき)をもって、おほくび、はたそで、いろへたる直垂(ひたたれ)に」(出典平家物語(13C前)一一)
  4. おくみ(衽)
    1. [初出の実例]「くどかれて下女おふくびを付ちがい」(出典:雑俳・末摘花(1776‐1801)二)
  5. おくみ(衽)
    1. [初出の実例]「おふくびで見るのが馬の女房也」(出典:雑俳・柳多留‐四(1769))

大領の語誌

古くは現在の「襟・衿」を指す用語がなく「くび」と呼んでいた。中世末期の「天正本節用集」には「領 エリ」が見られ、中世には共用されるが、「おほくび」の転化した「おくみ」と、「えり」はその後、意味範囲を分け合って用いられる。


たい‐りょう‥リャウ【大領】

  1. 〘 名詞 〙 ( 「だいりょう」とも )
  2. 令制で、郡司の長官。在地の有力豪族を任用する。おおきみやつこ。こおりのみやつこ。郡司(ぐんじ)。〔令義解(718)〕
    1. [初出の実例]「武蔵の国、多麿の郡大領として、大伴の赤麿と云者有けり」(出典:今昔物語集(1120頃か)二〇)
  3. 大国の領主。
    1. [初出の実例]「今天が下を掌握し、四海に羽打つ大領なれど、いまだ主従の縁切れねば、我為にはいつ迄も草履取の此下兵吉」(出典:浄瑠璃・三日太平記(1767)松下住家)

おお‐みやつこおほ‥【大領】

  1. 〘 名詞 〙 律令制の郡司(ぐんじ)の長官。少領主政主帳を指揮する。大郡上郡中郡設置。おおのみやつこ。こおりのみやつこ。こおのみやつこ。→郡司
    1. [初出の実例]「高市郡の大領(ヲホミヤツコ)高市県主(あがたぬし)許梅、儵忽(にはか)に口閉(くちつく)びて言(ものい)ふこと能はず」(出典:日本書紀(720)天武元年七月(北野本訓))

おおい‐みやつこおほい‥【大領】

  1. 〘 名詞 〙 令制での各等級の郡の長官。こおりのみやつこ。おおきみやつこ。たいりょう。

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「大領」の解説

大領
だいりょう

律令制下の郡司の長官。大・上・中・下郡に各1人。3里以下からなる小郡には大・少領の区別なく郡領のみがおかれた。選叙令に「性識清廉にして,時務に堪える者」をとり,複数の候補者があって才用が同じならば先に国造(くにのみやつこ)をとれと規定され,大領となった者には外従八位上の位を与えるとある。

出典 山川出版社「山川 日本史小辞典 改訂新版」山川 日本史小辞典 改訂新版について 情報

世界大百科事典(旧版)内の大領の言及

【郡司】より

…律令国家の地方行政組織の基礎単位である郡の官人の総称。広義には長官・次官の大領(たいりよう)・少領(しようりよう)と書記にあたる主政(しゆせい)・主帳(しゆちよう)の四等官(正員)を意味する。狭義には大領・少領のみをいい,この場合は郡領(こおりのみやつこ)といった。…

※「大領」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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