日本大百科全書(ニッポニカ) の解説
被災宅地危険度判定連絡協議会
ひさいたくちきけんどはんていれんらくきょうぎかい
大規模な地震・大雨などで被害を受けた宅地を調査し、二次災害の危険度を判定する活動を支援するための協議会。1995年(平成7)の阪神・淡路大震災で、被災地の自治体職員だけでは被害状況の把握に限界があったことを教訓に、1997年5月に、都道府県や市町村の枠組みを超えて相互支援を円滑に進める目的で設立された。本部を東京都千代田区の公益社団法人・全国宅地擁壁技術協会内に置く全国協議会と、各都道府県の協議会がある。会員は都道府県、政令指定都市、市町村など。協議会は、各都道府県がボランティアとして登録した被災宅地危険度判定士について、あらかじめ通しの登録認定番号を付与。大規模災害時に迅速・的確に危険度を判定するため、自治体の枠組みを超えた相互支援が円滑に進むように調整する。判定における実施体制を整備するため、全国統一の判定マニュアルの作成や判定方法の改善に取り組んでいる。また質の高い被災宅地危険度判定士を育成するため、講習会などを実施する。さらに被災宅地危険度判定士が判定中に災害や不慮の事故に巻き込まれた場合に備え、協議会は保険会社と契約し、被災宅地判定士が死傷した場合の補償を実施する。死亡時の補償額は2000万円。入院は1日当り5000円、通院は1日当り3000円を補償する。
被災宅地危険度判定制度は1997年に政府と地方自治体によって創設された制度で、被災自治体の要請に応じ、他の自治体から被災宅地危険度判定士を派遣し、被害状況を迅速・的確に把握して二次災害を軽減・防止し住民の安全を確保することを目的としている。被災宅地危険度判定士は地面の亀裂や陥没、盛り土を固める擁壁の傾きなどを調べ、被害が大きい順に「危険宅地(赤色)」「要注意宅地(黄色)」「調査済宅地(青色)」に分類し、周囲から見えやすい場所に判定ステッカーを表示して、通行人など周囲に危険の有無を知らせる役割を担っている。
[矢野 武 2017年2月16日]