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補償教育 ほしょうきょういくcompensatory education

世界大百科事典 第2版の解説

ほしょうきょういく【補償教育 compensatory education】

教育の機会均等を実質化し,そのことを通して社会の貧困問題の解決に資することを目的として行われる教育であり,1960年代以降,先進資本主義諸国,とくにアメリカおよびイギリスにおいて採用されるにいたった新しい教育政策の理念である。経済協力開発機構(OECD)の教育政策提言の一つの基調ともなっている。その理念は,経済的,社会的,文化的に恵まれない家庭的ないし地域的環境に育つ子どもたちは,たとえ平等な学校教育の条件が与えられても,入学前にすでに形成されている学校教育に対する無関心や言語能力の低下などのために,発達の平等な機会を保証されたことにはならないという立場から,そうした〈恵まれない子どもたちthe disadvantaged children〉に対して,その置かれた環境の劣悪さ(たとえば貧困)の程度に比例して教育サービスを傾斜的に配分することによって,彼らのハンディキャップを補償する必要があるというものである。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

補償教育
ほしょうきょういく
compensatory education

社会・経済的、文化的に恵まれない地域あるいは家庭の子弟の教育について、特別の教育的配慮(教育施設・設備などの教育条件の整備や特別な教育活動の推進など)を提供し、そうした子供の教育的不利益やハンディキャップを、国や社会が家庭にかわって積極的に補償しようとする教育プログラムとその政策をいう。
 補償教育は、1960年代にアメリカで計画・実施され、その後カナダ、イギリス、イスラエルなど多くの国で計画され、OECD(経済協力開発機構)でも補償教育政策の重要性を指摘し、各国の世論の喚起に努めている。経済的貧困階層あるいは少数民族(マイノリティminority)集団の家庭など、社会・経済的に恵まれない家庭にあって、文化的環境条件も悪く、教育や学校に対する無関心、家庭のなかの言語的貧困による言語的、認知的能力発達の遅れ、あるいは学業不振などの教育的不利益が生じてしまい、子供は学校教育が開始される時点で、すでに大きな教育上のハンディキャップを背負わされてしまう。教育の機会均等という原則に照らし、こうした教育上のハンディキャップや不平等を是正し、教育における平等で公正な競争を実質的に保障しうる措置が必要となる。しかも家庭の貧困は、子供の知的発達にもっともたいせつな幼児期の育児環境の悪化を招き、子供の知的発達を疎外し、そのため学業不振、ひいては就職の困難、経済的貧困をもたらす。そうした悪循環を断ち、問題の解決を図ることが求められてくる。このことは、アメリカのジョンソン大統領(在任1963~69)の「貧困との戦い」政策に端的にみられる。[二宮 皓]

補償教育プログラム

このような意図から計画、実施された補償教育プログラムには多様なものがあるが、アメリカで実施されたもので代表的なものとして、ヘッド・スタートHead Start(競走用語で、優先発走のこと)計画、フォロー・スルーFollow Through計画、教育効果促進計画(ニューヨーク市)、大学進学援助College Bound計画などがある。イギリスでは、教育優先地域Education Priority Area計画が計画、実施されてきている。
 補償教育プログラムは、ヘッド・スタート計画に代表されるように、幼児教育、就学前教育段階を中心とするものであるが、学校教育の改善、学校と地域社会あるいは家庭との連携の改善、教師の資質の改善などをねらいとするものもあって、きわめて多様である。[二宮 皓]
『岡田正章・今村令子編『世界の幼児教育――アメリカ』(1983・日本らいぶらり)』

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世界大百科事典内の補償教育の言及

【奨学制度】より

…国民の権利の観点から教育の機会均等の実現をねらいとするもの。資本主義社会では,貧富の格差の深刻化に伴い,家庭の文化環境が子どもの発達に重大な影響を与えていることが注目され,貧困な家庭環境などにより成長・発達にハンディキャップをもつ者に対して,そのハンディキャップを補償するための特別の援助が必要であるとする補償教育と呼ばれる新しい教育の機会均等理念による奨学制度が実施される動向がみられる。アメリカの奨学制度は伝統的に機会均等型の制度を主としつつ,1958年の国家防衛教育法にもとづく連邦政府の奨学事業によって人材確保型の性格を強化してきたが,64年の〈貧困との闘い〉の宣言以降は,65年の高等教育法の教育機会奨学金など補償教育理念にもとづく奨学制度を充実させてきている。…

※「補償教育」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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