緑色植物は、光のもとでは光合成と呼吸を同時に行っているが、この二つの作用は、酸素と二酸化炭素のガス交換がまったく正反対の反応である。したがって、弱光のもとでは呼吸が光合成に優先して、酸素吸収と二酸化炭素放出がみられるが、だんだん光を強くしていくと、酸素あるいは二酸化炭素の吸収も放出もまったくみられなくなる。このときの光の強さを補償点という。補償点は、植物の種類、年齢、環境条件などで変化するが、補償点の低い植物ほど弱光をよく利用できるといえる。一般に陽生植物や陽葉の補償点が1000~2000ルクスであるのに対して、陰生植物や陰葉では100~500ルクスといわれる。二酸化炭素の補償点は、植物を密閉した容器に入れて十分に強い光を照射して光合成を行わせたとき、容器内の二酸化炭素の最終濃度で表される。温帯性のC3植物(還元的ペントースリン酸回路によって初期の炭酸同化を行う植物)では30~50ppmであるが、トウモロコシ、サトウキビなどのC4植物(C4ジカルボン酸回路によって初期の炭酸同化を行う植物)では5ppm以下になる。
[吉田精一]
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