( 1 )女性の成人儀礼で男の元服に対するもの。古くは垂髪を結髪にする初笄(はつこうがい)が成人儀式であったが、服装や髪形の変化に伴って廃れ、裳を着ける儀式が行なわれるようになった。これを「着裳」と表記する例が既に「貞信公記」などに見られ、「もぎ」は「着裳」の和訓である。
( 2 )基本的には結婚を前提とした重要な通過儀礼なので、腰結の役は一族の長がつとめることが多い。没落して後見がいない場合、裳着を行なえないこともあり、年齢的に成人しても女童のままで過ごす例も見られる。
平安朝の宮廷貴族社会で行われた通過儀礼の一つで,女子が成人して初めて衣裳を着ける儀式をいう。裳著とも書き,和文の文学作品での呼び方で,漢文体の公卿日記・儀典書などでは〈着(著)裳(ちやくも)〉という。年齢はだいたい12~14歳ぐらいで行われ,配偶者の決まったとき,または見込みのあるときに行うことが多く,これによって結婚の資格を獲得したことを意味する。裳の腰を結ぶ腰結(こしゆい)の役,髪を結い上げる結髻(けつけい)・理髪の役があり,腰結は元服の加冠と同じく最も重要視され,尊属,または徳望のある高貴な人を選んであらかじめ依頼しておく。皇女の場合は天皇みずから結ぶこともあった。儀式は夜間に行われた。古くは男子の元服の〈冠〉に相当するものとして,許嫁するとき垂髪を束ねて結髪にする〈髪上(かみあげ)〉〈初笄(はつこうがい)〉の儀が行われたが,平安中期以降,髪型が垂髪に移行し服装も変化するにつれ,成年式としての裳着の儀の中に吸収され,髪上という呼び名も廃れた。垂髪では〈鬢(びん)そぎ〉が既婚の表示となったとみられる。この儀にも元服と同じく叙位の事が行われた。
執筆者:中村 義雄
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
出典 山川出版社「山川 日本史小辞典 改訂新版」山川 日本史小辞典 改訂新版について 情報
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