二つ以上の学年の児童・生徒を一つの学級に編制したもの。日本の公立義務教育諸学校の学級は、同学年の児童・生徒で編制することが原則である。しかし、児童・生徒数が著しく少ないなど特別の事情がある場合には、政令で定めるところにより、二つ以上の学年の児童・生徒を1学級に編制することができる(「公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律」第3条)。二つ以上の学年の児童で編成する学級の児童・生徒数の基準は、小学校については16人(ただし第1学年の児童を含む場合は8人)、中学校については8人を標準として都道府県教育委員会が定める(同条2)。
複式学級では、1人の教師が二つ以上の学年の教授・学習活動を同時に展開せねばならず、多くの負担や困難を伴う。2015年(平成27)に文部科学省が通知した「公立小学校・中学校の適正規模・適正配置等に関する手引」では、複式学級によって生じる教育上のデメリット(教材研究・授業準備にかかる負担の大きさや直接指導が必要となる教育活動の制約など)にかんがみ、複式学級が存在する規模の学校について、統合などの適否を速やかに検討する必要があることが示されている。他方、同手引では複式学級や小規模校がもつ教育上のメリットも示されている。複式学級には、そうしたメリットを最大限に生かし、協同学習の充実を図るなど、カリキュラム・指導方法などをくふうして展開することが大いに要請されている。
[木下豪・浜田博文 2023年4月20日]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…現在,日本においては,学級を編制するにあたって〈同学年〉(学校教育法施行規則),すなわち年齢および知能,健康を法制上の〈学級編制〉基準としているが,子どもの数の少ない小規模小・中学校などのように,〈特別の事情がある場合においては,数学年〉の子どもで学級を編制することができる。こうした学級は複式学級と呼ばれ,通常の同一学年の子どもで編制されたものは単式学級と呼ばれる。僻地などの極端な小規模校で全校,全学年の子どもが1学級を構成する場合は,単級複式学級(単級学校)という。…
…しかし僻地教育の問題は,たんに物的な補助を充実させれば発展をみるという性格のものではない。近年の極端な過疎化現象による児童生徒数の減少とそれに伴う複式学級編制は,発達段階に即した集団的学習を困難にしており,学校統廃合からは遠距離通学や寄宿舎の設置による家庭教育との遊離など,新たな問題が生まれている。教員にとっても教科・校務の重複担当や研修機会の不足など問題は多い。…
※「複式学級」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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