西の内紙の略称で、常陸(ひたち)国(茨城県)の常陸大宮(ひたちおおみや)市西野内(にしのうち)を原産とする和紙の一種。1648年(慶安1)に藩主の水戸光圀(みつくに)が、この地でコウゾ(楮)を原料とする紙を漉(す)く細貝八郎右衛門知治に対し、この紙名を与えて奨励したもので、1689年(元禄2)に専売制となった。さらに正徳(しょうとく)年間(1711~16)には細貝清蔵が抄紙場を拡張し、同質の紙を漉く者が付近にも増えて江戸へ売りに出された。初めは傘紙などに用いられたが、『大日本史』の用紙や検地帳などの重要文書の用紙ともなり、1901年(明治34)から1926年(大正15)までは選挙の投票用紙や印鑑証明用紙に指定されて、全国的に有名になった。甲斐(かい)国(山梨県)や下野(しもつけ)国(栃木県)でも同質の紙が漉かれるようになり、甲斐産のものは甲州西(こうしゅうにし)といわれた。1977年(昭和52)に国の選択無形文化財に指定され、現在は数軒で伝統を守り、その保存に努めている。
[町田誠之]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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