日本大百科全書(ニッポニカ) 「西原」の意味・わかりやすい解説
西原(村)
にしはら
熊本県中部、阿蘇郡(あそぐん)にある村。阿蘇火山地西端と肥後台地東端とからなる。熊本テクノポリス圏域内にテクノ回廊として位置づけられる前までは、約3000ヘクタールの広大な山林が、水源涵養(かんよう)林として村の大きな収入源になっていた。過半数を占める専業農家は、米、葉タバコ、サトイモ、サツマイモなどの栽培と赤牛飼養、養蚕を軸にしてきたが、現在では兼業化が著しく進み、赤牛飼養、養蚕、葉タバコは衰退。この変化は、村内に造成された鳥子工業団地、隣接する大津(おおづ)町・菊陽(きくよう)町・益城(ましき)町などに誘致された臨空港型工場の立地などによって誘発されたものであり、また、村の北端ならびに南端にそれぞれ立地しているゴルフ場も影響を及ぼしている。整備された県道熊本―高森線は、南郷谷(なんごうだに)に至る近道として利用されるだけでなく、沿道近くの大切畑ダム(おおぎりはただむ)、揺ヶ池(ゆるぎがいけ)、俵山峠(たわらやまとうげ)などの観光資源に大きく寄与している。とくに、地元の人が「お池さん」とよび、霊池として崇(あが)めてきた揺ヶ池は年中参拝者が絶えない。面積77.22平方キロメートル、人口6426(2020)。
[山口守人]
〔2016年熊本地震〕2016年の熊本地震では、4月14日21時26分の地震で村内小森で震度6弱、4月16日1時25分の地震では同じく小森で震度7を観測するなど、大きな揺れに見舞われた。この地震による村内の被害は、関連死を含め死者8名(うち、警察の検視によって確認された死者は5名)、重傷者18名、住家全壊512棟にのぼり、罹災世帯数は1377を数えている(平成30年5月11日『平成28(2016)年熊本地震等に係る被害状況について【第272報】』熊本県危機管理防災課ほか)。
[編集部]
西原(町)
にしはら
沖縄県中頭郡(なかがみぐん)にある町。沖縄本島南部東海岸にあり、那覇市の北東に隣接する。1979年(昭和54)町制施行。古くは首里(しゅり)王府の北(方音でニシ)まで広がっていたことから西原とよばれた。丘陵地域と海岸沿いは沖積低地。国道329号が東海岸沿いを縦貫、西部を沖縄自動車道が走り西原インターチェンジがある。琉球(りゅうきゅう)王朝時代は王室への上納米の指定地で直轄地。第二次世界大戦前からサトウキビの生産地として知られていたが、近年、住宅地化が進み人口が急増し、さらに首里にあった琉球大学が1977~1984年にかけて移転してきた。そのほか、沖縄キリスト教学院大学、沖縄県立埋蔵文化センターもあり、文教の町をなしている。名勝・史跡としては与那原(よなばる)町との境界にある運玉森(うんたまもー)、尚円王(しょうえんおう)の神殿の内間御殿(うちまうどぅん)(国指定史跡)などがある。面積15.90平方キロメートル、人口3万4984(2020)。
[堂前亮平]
『『西原町史』全14巻(1984~ ・西原町)』