西鶴諸国はなし(読み)さいかくしょこくはなし

精選版 日本国語大辞典 「西鶴諸国はなし」の意味・読み・例文・類語

さいかくしょこくはなし【西鶴諸国はなし】

  1. 浮世草子五巻。井原西鶴作。貞享二年(一六八五)刊。内題「近年諸国大下馬」。「人は化物世にない物はなし」という視点から、怪奇談、珍談伝説などをとりあげ、西鶴の目と文章を生かした三五短編収載

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改訂新版 世界大百科事典 「西鶴諸国はなし」の意味・わかりやすい解説

西鶴諸国はなし (さいかくしょこくばなし)

浮世草子。井原西鶴作。5巻35話。1685年(貞享2)刊。内題は〈近年諸国咄〉,〈大下馬〉。題を三つ有するのは珍しい例。当初は外題を〈大下馬〉,内題を〈近年諸国咄〉として出すはずのところ,本書と同時に京の書肆西村市郎右衛門から《宗祇諸国物語》が出るなどの事情があって,急遽〈西鶴〉を冠して対抗するか,もしくは早い時期に改題したものと考えられる。内容は近年(ほぼ近世初期)の諸国奇譚集。三都(京,大坂,江戸)および畿内で3分の2を占めるが,北は南部,南は筑前にまでわたる。超現実的な怪異奇事を現実主義的な眼で現世的次元までひきおろし,卑俗化,相対化してみせるのが特徴。また話の素材源はほとんどわかっており,西鶴の小説作法を知るうえにも恰好の作品である。説話的ながら,同時にはなし(笑話)の方法も導入し,その可笑性も面白さの一因となっている。〈人はばけもの,世にない物はなし〉(序文)は,西鶴の人間認識を示すものとしてしばしば引用される。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「西鶴諸国はなし」の意味・わかりやすい解説

西鶴諸国はなし
さいかくしょこくはなし

浮世草子井原西鶴作。5巻5冊。貞享2 (1685) 年刊。内題『近年諸国はなし』,副題『大下馬』。西鶴の見聞や,伝説など,諸国の怪談,珍聞を集めたもの。 35章の各章にそれぞれ「知慧」「不思議」「義理」などの題目を掲げ,それらの話を巧みな語り口をもって西鶴らしい人間臭さで処理している。いわゆる雑話物の一つ。

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