中国,日本などの王城ないし皇居周辺の特別行政区域。日本では大和,河内,摂津,山背(城)の4ヵ国からなり四畿内と呼ばれたが,のち河内国から和泉国が分かれ,五畿内となった。畿内制が定められた時期は大化改新にさかのぼる。大化2年(646)正月に政治改革の基本方針を示す〈改新の詔〉が出されたが,その第2条で京師の制とともに畿内を置くことが定められている。このときの畿内は,大宝令制の国を基礎とする畿内と異なり,東西南北の4地点をあげてその範囲を示している。その4地点は,東は名墾(なばり)(名張)の横河(よかわ),南は紀伊の兄山(せのやま),西は赤石(明石)の櫛淵,北は近江の狭々波合坂山(ささなみのおおさかやま)である。東西南北の4地点をあげて範囲を示す畿内制は,北魏の首都平城で行われた制度を踏襲したものであり,令制の国を単位とする畿内は,東魏の首都鄴で行われた制度にならったものである。大化改新のさいに北魏の平城型の畿内制が採用されたのは,当時まだ国の制度が成立していなかったことによるが,それとともに4地点で示される範囲が,古くから大和政権を構成していた諸豪族の居住地域であったため,特別の行政地域として指定されたのである。なお畿内制の成立時期については,《日本書紀》に載せる〈改新の詔〉の史料的な信憑性がうすいこと,4地点をもって示される地域に特別な関心が向けられるのは672年の壬申の乱以後であることなどを理由として,天武朝であったとする説もある。初期の畿内の行政上の扱いは明らかでないが,大宝令の成立のさい,畿内の人民には租税のうち調の半分と歳役(庸)のすべてを免除する特典が与えられた。また令に,五位以上の官人が休暇で畿外に出る場合は,天皇に奏聞して許可をうべきことを規定しているが,これは畿内が官人の常住する特別地域とみられていたことを示している。
→五畿七道
執筆者:長山 泰孝
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王城の周辺地域に設定された特別の行政範囲。畿内制は中国の『周礼(しゅらい)』にみえ、古代の北魏(ほくぎ)や東魏などで採用され、日本でもこれに倣って設定された。大化改新の詔(みことのり)(646)では、東は名墾(なばり)の横河(よこかわ)、南は紀伊(き)の兄山(せのやま)、西は赤石(あかし)の櫛淵(くしふち)、北は近江(おうみ)の狭狭波(ささなみ)の合坂山(おうさかやま)に画された範囲を畿内国(うちつくに)としている。692年(持統天皇6)には大倭(やまと)(大和)、河内(かわち)、摂津(せっつ)、山背(やましろ)(山城)の4か国を「四畿内」とし、河内に設置された和泉監(いずみのげん)がいったん廃止ののち757年(天平宝字1)に和泉国となってからは五畿内となった。畿内制が実質的に成立したとみられる7世紀後半の天武(てんむ)朝では、畿内は畿外から軍事的に防衛され、官人を任用する地域であった。大宝令(たいほうりょう)でも畿内では調(ちょう)の半分と庸(よう)が免除されており、天皇側近の地として優遇されていた。
[金田章裕]
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「うちつくに」とも。古代の行政区分。現在の近畿地方の中央部にあたる。山城・大和・河内・和泉・摂津の各国が所属。646年(大化2)の改新の詔で四至の地点を示すかたちで畿内が規定された。中国の王畿の制の影響をうけて,大和政権の存在した大和盆地とその周辺を特定地域として設定。その後,令制の国の成立によって,畿内は大倭(やまと)(大和)・山背(やましろ)・河内・摂津の4国から構成されて四畿内とよばれ,757年(天平宝字元)の和泉国設置以後,五畿内(五畿)とよばれた。律令制度では畿内出身の氏族が律令官人として行政機構を動かし,また課役についても畿外地域とは負担が異なる。臨時の地方官として731年(天平3)に惣管(そうかん)を設置した。
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…また日本全国を表す語としても用いられた。五畿は山城・大和・河内・和泉・摂津の畿内の5ヵ国をさし,七道は東海道・東山道・北陸道・山陰道・山陽道・南海道・西海道(各項目参照)をさす。畿内は皇都周辺の特別行政地域として646年(大化2)に設置された。…
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出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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