解放令(読み)かいほうれい

日本大百科全書(ニッポニカ) 「解放令」の意味・わかりやすい解説

解放令
かいほうれい

1871年8月明治政府が四民平等の一環として、穢多(えた)・非人等の賤民(せんみん)の身分・職業を平民同様にするとした太政官布告。賤民廃止令・賤称廃止令ともいう。これにより身分差別の法的根拠はなくなり、その後の差別撤廃の運動の拠りどころとなったが、民衆の側も自己より下位にあった者が浮上してくることへの危機感から各地で解放令反対一揆に立ち上がるなど排除・差別の姿勢を持続し、とくに旧穢多身分を中心とする差別は部落問題として今日にまで至っている。なお、解放令の評価をめぐっては、旧来の身分的特権喪失にかわる経済的措置等が何ら講じられなかったことを挙げ、たんに一片布告に過ぎなかったとする見解もあるが、解放令とは身分の線引きを消去してしまうもので、特別措置を講じることはその妨げになる側面も孕んでおり、解放令はその徹底を第一義においていた。

[黒川みどり]

『黒川みどり著『近代部落史――明治から現代まで』(2011・平凡社)』

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「解放令」の解説

解放令
かいほうれい

賤称廃止令・賤民廃止令とも。穢多(えた)・非人などの称を廃し,身分・職業とも平民同様とする1871年(明治4)8月28日の太政官布告。各府県への通達には旧免租地への賦課を準備する旨も記された。これより先,穢多・非人への授産により徐々に平民へ編入する民部省案が出されていたが,廃藩置県後,大蔵省原案が採用され一時に解放となった。その背景には,当時の大蔵省による地租改正の準備,「国民」軍創出を企図した族属の廃止,対外的顧慮などがあった。

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旺文社日本史事典 三訂版 「解放令」の解説

解放令
かいほうれい

1871年,明治新政府がえた・ひにんなどの称を廃し身分職業とも平民と同様たるべきことを令した太政官布告
賤称廃止令・賤民廃止令ともいう。法令上解放されたものは40〜50万人。しかしその後も実質的には社会上の差別は強く,新平民と呼ばれるなどのいわれのない偏見の中で経済的貧困は改善されなかった。そのような中で,民主的風潮の高まりとともに,この差別と偏見をなくす部落解放運動がもりあがっていった。

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