穢多(読み)エタ

デジタル大辞泉 「穢多」の意味・読み・例文・類語

えた〔ゑた〕

中世および近世における賤民せんみん身分の一。江戸時代には非人ひにんとよばれた人々とともに士農工商の下におかれ、居住地も制限されるなど、不当な差別を受けた。主に皮革業に従事し、犯罪者の逮捕罪人処刑などに使役された。明治4年(1871)の太政官布告で法的には平民とされたが、なお「新平民」とよばれた。社会的差別は今も残存している。→部落解放運動
[補説]中世以降、差別視して「穢多」の字をあてた。

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精選版 日本国語大辞典 「穢多」の意味・読み・例文・類語

えたゑた【穢多】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 中世、賤民の一階層。掃除などの雑業に従事した。
    1. [初出の実例]「きよめをえたと云ふは何なる詞ばぞ。穢多根本は餌取(えとり)と云ふべき歟」(出典:塵袋(1264‐88頃)五)
    2. [その他の文献]〔文明本節用集(室町中)〕
  3. 江戸時代、幕藩体制の民衆支配の一環として、非人とともに士農工商より下位の身分に置かれ、過酷な差別を受けた階層。斃牛馬の処理、皮革の製造、藁細工など賤視された職業に従事し、罪人の逮捕・処刑などの賦役も強制された。居住地も劣悪な地域に集団的に隔離疎外され、子々孫々までその身分から離れることができなかった。明治四年(一八七一)太政官布告によって、法制上は穢多・非人の身分・呼称は廃止されたが、社会的な差別観は存続し、新平民・特殊部落民などの賤称で呼ばれ差別された。現在に至るも不当な差別は根絶されていない。→非人部落解放運動。〔書言字考節用集(1717)〕

えったゑった【穢多】

  1. 〘 名詞 〙 「えた(穢多)」の変化した語。→えた
    1. [初出の実例]「乞食穢多(ヱッタ)なとの如し」(出典:雑談集(1305)一〇)

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「穢多」の意味・わかりやすい解説

穢多
えた

封建時代の主要な賤民身分。語源たか餌取 (えとり) という説があるが,つまびらかでない。南北朝時代頃から卑賤の意味をもつ穢多の字があてられるようになった。鎌倉,室町時代には寺社に隷属する手工業者,雑芸人らを,穢多,非人,河原者,散所 (さんじょ) などと呼んだが,まだ明確な社会的身分としての規定はなく,戦国時代に一部は解放された。江戸時代に入り封建的身分制度の確立とともに,没落した一部の住民をも加えて,士農工商の身分からもはずされた最低身分の一つとして法制的にも固定され,皮革業,治安警備,清掃,雑役などに職業を制限された。皮多,長吏,その他の地方的名称があったが,非人よりは上位におかれた。職業,住居,交際などにおいて一般庶民と差別され,宗門人別帳 (→宗門改帳 ) も別に作成された。明治4 (1871) 年8月 28日太政官布告でその身分制は廃止され,形式的には解放されることになった。幕末には 28万人を数えた。 (→ , 部落解放運動 )  

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「穢多」の解説

穢多
えた

近世の主要な賤民身分の一つ。中世前期の穢多は,非人=キヨメの大きな連環のなかにあったが,中世後期には非人宿の分化により,斃牛馬処理や行刑を専業とする河原者(かわらもの)の集団が形成されていく。この河原者が近世の穢多身分につながった。幕藩権力は彼らに皮革御用・行刑役・牢番などを勤めさせ,穢多身分として編成をはかった。しかし畿内などでは皮多(かわた),関東では長吏(ちょうり)などの地域的呼称が併存し,みずからは穢多とは違うという意識をもつこともあった。一般的には百姓からなる本村の枝村を構成し,その周辺に展開する草場・旦那場・職場などとよばれる縄張り(権域)で斃牛馬処理を行った。そこで得た牛馬皮を原料として皮革業・履物業などを発展させ,また農業にも従事した。関東では穢多頭弾左衛門が非人や猿飼も支配したが,畿内では穢多頭はおらず,非人は別組織であった。このようにその存在形態は多様だが,縄張りを穢多身分内の相互秩序で形成し,穢多村間に広域的ネットワークを形成していた点で共通する。

出典 山川出版社「山川 日本史小辞典 改訂新版」山川 日本史小辞典 改訂新版について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「穢多」の意味・わかりやすい解説

穢多
えた

士・農工商・穢多非人

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