解釈改憲(読み)カイシャクカイケン

デジタル大辞泉 「解釈改憲」の意味・読み・例文・類語

かいしゃく‐かいけん【解釈改憲】

政府議会などが、憲法改正の手続きを経ることなく、憲法条項に対する解釈を変更することによって、憲法の意味内容を変えること。

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

百科事典マイペディア 「解釈改憲」の意味・わかりやすい解説

解釈改憲【かいしゃくかいけん】

憲法を正式手続きによって改正するのでなく,その条文解釈を変更することで実質的改憲を実行しようとすること。近代国家は基本的に三権分立を原則として運営されており,その大前提となる基本法として憲法を有している。国家権力の合法性を基礎づけているのも憲法である。革命クーデタによって非常事態を生じさせ憲法の効力を暴力的に停止することで新権力を樹立し新憲法体制に移行するというケースは,歴史上しばしば見られるが,それは基本法たる憲法の改正に高いハードルが設けられているからである。日本国憲法は第96条で改正のための要件を厳しく定めており,日本国憲法改正・自主憲法制定を結党以来党是としている自由民主党にとって大きな壁となってきた。第一次安倍晋三内閣は憲法改正の要件を緩和する国民投票法を成立させ,2012年12月に成立した第二次安倍内閣では憲法改正に取り組む姿勢を鮮明にしたが,96条改正が国民世論に受け入れられないとみて,憲法の解釈変更によって事実上憲法改正を実現する方向に踏み出した。焦点となるのは憲法前文と第9条で,集団的自衛権行使を容認する,という方針である。集団的自衛権について歴代内閣は憲法で認められているのは個別自衛権であり,集団的自衛権は保持するもののその行使は憲法上認められない,という見解を維持してきた。憲法を基幹とする法体系の整合性を厳しく審査することを任務とする内閣法制局の見解も現行憲法のもとでの集団的自衛権行使容認には一貫して否定的である。第二次安倍内閣は法制局長官に行使容認論者の小松一郎を起用,同盟国アメリカの支持を踏まえ,集団的自衛権行使容認を閣議決定する構えである。与党公明党は慎重論であり,憲法改正を主張する保守派のなかにも解釈変更による事実上の改憲には反対の意見が根強くあるが,2014年7月安倍内閣は集団的自衛権行使容認を閣議決定し,解釈改憲に大きく踏み出した。

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世界大百科事典(旧版)内の解釈改憲の言及

【日本国憲法】より

…象徴天皇は,行政権の主体でもなく,対外的に日本国を代表する権能ももたないから,君主でもまた元首でもない。天皇
【運用】
 権力担当者に着目する場合,1983年現在で,憲法を運用する政治(以下,憲法政治という)は,憲法施行後の2,3年を別とすると,〈解釈改憲を求める政治〉と〈明文改憲を求める政治〉という2頭の馬につねにひかれてきたということができそうである。〈解釈改憲〉とは,憲法の明文(規定)を改正することなく,憲法の解釈をその文言と論理からは不可能なまでゆがめることによって,明文改憲が行われたと同様の状態を解釈の名においてつくり出し,憲法とは本来両立しない政治を正当化しようとする政治のしかたを意味する。…

※「解釈改憲」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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