日本国憲法は96条で改正手続きを規定しているが、1947年の施行から一度も行われていない。自民党は昨年3月、9条への自衛隊明記や緊急事態条項の新設など4項目の条文案を作成。党総裁の安倍晋三首相は2020年の改正憲法施行を目指し、国会での議論の深化を期待する。改憲原案は衆院で100人以上、参院で50人以上の議員の賛成で提出。衆参両院の憲法審査会で審議され、いずれも過半数の賛成で本会議に上程される。両院でそれぞれ総議員の3分の2以上が賛成すると、国民に改憲を発議。60~180日の間に国民投票が行われ、有効投票の過半数の賛成で承認となる。天皇が公布し、施行される。
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憲法の基本原理を維持しつつ,正規の改正手続にしたがって憲法正文を変更(削除・修正・追加・増補)する作用。憲法の基本原理を変更する作用である憲法制定から内容上区別され,また正規の改正手続によらないで憲法正文を実質的に変更する憲法変遷から形式上区別される。近代の憲法典は,憲法を変更する方法として,普通の立法手続に比べて加重された改正手続(憲法改正条項)を定めているのが普通である。その趣旨は,国の根本法である憲法の安易な変更を防ぐとともに,合法的変更の道を開いておくことにより憲法が時代の変化に柔軟に対応していくことを可能とし,全体として憲法の安定性と永続性を確保しようとすることにある。
改正手続が普通の立法手続に比べて加重されている憲法を硬性憲法,加重されていない憲法を軟性憲法という。成文憲法典をもたないイギリスを別とすれば,近代以来制定されたほとんどの憲法が硬性憲法である。硬性憲法の改正方法はさまざまであるが,改正権者を基準にして大別すると,(1)普通の立法機関が加重された手続で行う方法(1850年のプロイセン憲法などドイツの憲法に多くみられる),(2)特別の憲法会議によって行う方法(アメリカ合衆国憲法のほかアメリカ諸州の憲法にみられる),(3)立法議会または特別の憲法会議の議決と国民投票とを併用して行う方法(現行イタリア憲法,フランス第四・第五共和政憲法,スイス憲法など),の三つの類型がある。明治憲法は,改正手続(73条)として,議事・議決の要件を普通の立法手続に比べて加重するとともに,改正の発案権を統治権を総攬(そうらん)する天皇に専属させ,基本的に(1)型を採用していた。これに対して日本国憲法は,改正手続(96条)として,〈各議院の総議員の三分の二以上の賛成〉による国会の発議と,国民投票での過半数の賛成による承認を要するものと定め,(3)型を採用している。改正の方法は,憲法の基本原理と密接な関係をもっていることに注意する必要がある。たとえば,君主制原理にもとづく憲法(プロイセン憲法や明治憲法)のもとでは,普通の立法権者(君主と議会)が憲法改正権をも行使するという(1)型が概してとられるのに対して,国民主権の原理にもとづく憲法(アメリカ,フランス,日本国憲法など)のもとでは,憲法改正権は,国民の憲法制定権力の観念と多かれ少なかれ結びつくことにより普通の立法権とは異なったものと観念され,したがって,改正手続も国民の意思をいっそう反映する方法((2)ないし(3)型)がとられる傾向をもつことになる。このほか,憲法の安定性と永続性を確保する仕方の重点が近代では主として改正手続の加重性におかれていたのに対して,現代ではむしろ憲法改正限界論におかれるようになってきていることにも注意する必要があろう。
憲法改正限界の問題とは,憲法改正権に法理上一定の限界があるか否かという問題である。かような限界を認めない説(改正無限界説)は,改正手続によりさえすればどのような改正(基本原理の改正すら)も法的に許されると主張するもので,憲法規定の間に価値序列と効力上の段階を認めず,また,憲法改正権から区別された憲法制定権力の観念を法の観念としては否定するかあるいは憲法改正権と同視する点に特徴をもつ。これに対して,限界を認める説(改正限界説)は,所定の改正手続によっても憲法の基本原理を変更することは許されず,そのような変更は憲法改正ではなく,法的意味の革命(旧憲法の廃棄と新憲法の制定)とみなされるべきだと主張するもので,憲法規定の間に基本原理とその他の規定という効力上の段階を認め,また,基本原理は憲法改正権に優越する憲法制定権力の所産だとする点に特徴をもつ。
近代では,法実証主義の支配のもとで,概して無限界説が支配的であったが,現代では,自然法思想の再生や憲法保障の強化という傾向のもとで,限界説が有力となっており,また,共和政体の改正禁止を定める現行イタリア憲法やフランス第四・第五共和政憲法,憲法の基本原理の改正禁止を定めるドイツ基本法のように,明文の改正禁止規定をもつ憲法も登場している。日本では,明治憲法のもとでは,憲法1条所定の〈国体〉(〈大日本帝国ハ万世一系ノ天皇之ヲ統治ス〉)を改正限界とする限界説が支配的であり,また日本国憲法のもとでは,前文で国民主権の原理に〈反する一切の憲法,法令及び詔勅を排除する〉と定められていることとも関連して,国民主権主義,基本的人権の尊重,平和主義(ただし,戦力不保持については説は分かれている)を改正限界とする限界説が支配的である。日本国憲法が明治憲法76条所定の改正手続にしたがって制定されたにもかかわらず,天皇主権から国民主権への転換(国体の変革)という内容に着目して,憲法改正としてではなく新憲法の制定とみなされているのは以上のような事情にもとづく。
改正限界説は,憲法変更現象を認識する理論という性格と同時に,すぐれて実践的主張としての性格をもった理論である。もともと改正限界説は,所説の内容からして,憲法改正権から憲法の基本原理を防衛するという実践的主張としての性格(保守的機能)を本質的にもつが(ワイマール憲法のもとで限界説を主張したC. シュミットの基本的な狙いのひとつは,社会主義勢力が多数を占める議会=憲法改正権者から憲法を防衛する点にあった),今日のドイツや日本の一部の学説で主張されている限界説のように,憲法の基本原理を超実定法的自然法原理とし,憲法制定権力もこのような基本原理に拘束されるとする限界説の場合には,限界をこえた〈改正〉に対しては国民の抵抗権の発動が要請されることになり,憲法保障のための実践的主張という性格をいっそう強くもつことになろう。これに対して,C.シュミットのように,群集の歓呼や喝采に国民の憲法制定権力の発動をみる場合には,限界説は,逆に非合理的な憲法破壊を弁証する実践的主張としての性格(変革機能)を強くもつことになる。このようにみると,憲法改正限界論の核心は,憲法制定権力の観念をどのように把握するかにあるといえよう。なお,今日の日本の学説にも影響を及ぼしつつあるドイツ型限界説のもとでは,憲法の基本原理を否定する政党の非合法化(基本法21条2項)こそ改正限界を実効的に担保する手段だということになることにも注意する必要がある。
日本国憲法のもとでは,これまで憲法改正は行われていないが,憲法改正の主張は,保守党の側から戦後ほぼ一貫して唱えられてきている。主張の骨子は,日本国憲法は占領下に占領軍により〈押しつけ〉られたものだから,今日新たに〈自主〉的に制定し直すべきだということと,憲法の内容が日本の実情と国情に合わないから改正すべきだということにある。そして,改正すべきだとされている内容は,憲法9条(戦力不保持)の問題をはじめ,天皇の地位と権限の強化,国民の権利の制限と義務の強化,緊急権規定の創設,国会の〈最高機関〉性の削除など憲法のほぼ全体にわたるが,全体として反個人主義的・国家主義的傾向を強くもつ点に改憲論の特徴がある。
執筆者:岩間 昭道
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… この項目は結党当時,改憲―再軍備を強く主張した鳩山,重光葵(まもる),岸信介らの民主党と,改憲に消極的で経済再建の政治路線をとった吉田自由党との妥協の産物であった。ようやく最終項にはいったとはいえ,政綱に掲げられた以上,憲法改正が自民党の大きな政治目標となったことは間違いない。党発足後の数年間,鳩山,岸両政権のもとで,改憲の企て,その準備としての小選挙区制,警察官職務執行法改正などの努力が続けられ,また新日米安全保障条約が締結されたのは,この政綱線上のものであった。…
…46年1月4日には軍国主義者の公職追放が指令された。こうした一連の改革の仕上げが憲法改正であって,GHQ草案にもとづいて幣原内閣によって作成された憲法改正案が,46年6月吉田茂内閣によって議会に提出されて成立し,11月3日公布,翌47年5月3日施行されたのである。新憲法の制定にともない,刑法,民法をはじめ諸法律も改正もしくは新たに成立し,一連の民主改革が進められていった。…
※「憲法改正」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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