改訂新版 世界大百科事典 「証券分析」の意味・わかりやすい解説
証券分析 (しょうけんぶんせき)
株式会社は金融機関から借入れによって資金を調達するとともに,株式・社債等の有価証券を発行し長期の資金を調達している。株式・社債は,証券市場において投資家相互間で売買される。そこで証券を購入し売却する際に,売買価格が投資家にとって妥当であるかを科学的に判断することが必要であるが,この目的のために発達してきたのが証券分析である。すなわち,証券を発行している企業の財務分析を行い,収益性,安全性,将来性を測定し,その後に,株式・社債等の証券の法律的な内容を調べ,結論として当該の株式あるいは社債に将来帰属する利息,配当の果実および値上がり益あるいは値下がり損をできるだけ具体的に明らかにする作業である。証券分析には,一般に株式と社債の二つの分野がある。もちろん,優先株式,転換社債,ワラント付社債(〈新株引受権〉の項参照)といった,株式と社債の中間的な性格,あるいは二つを組み合わせた有価証券も存在しているが,株式と社債の分析を適切に組み合わせ応用することによって,それぞれを分析することが可能である。
証券分析の基本は,過去の財務諸表を分析することによって経済,金融,産業を含む外的環境が変化するなかで収益を生み出す構造がどのように変化をしてきたかを読み取り,将来想定される外的環境において収益を見通すことにある。そして株式の場合には,1株保有する株主に帰属する利益,配当,純資産が最も基本的な投資判断の基礎となる。現在の株価すなわち1株を取得するに必要な投資額と,投資することによって株主に帰属する1株当りの利益,配当,純資産との比較を行う。投資額に比べ1株当りの利益,配当,純資産が大きければ大きいほど,また将来においてそれらの数値の成長率が高ければ高いほど,投資採算は高いと考えられる。株価とこれら諸数値との関係は株価収益率(PER),配当利回り,株価純資産倍率(PBR)といわれ,投資尺度として広く使われている。社債の場合には,社債発行企業の元利支払能力をみることが重要である。一般的にインタレスト・カバレッジと称される指標,すなわち金利支払に使われる金利支払前税引前利益が支払金利の何倍あるかを示すもので測定される。
→株式投資
執筆者:三国 陽夫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報