古代日本における高句麗(こうくり)、百済(くだら)、新羅(しらぎ)など朝鮮諸国に対する総称。奈良末期から平安初期にかけて渡来系氏族の類別を表す用語ともなる。諸蕃の語句の初出は『日本書紀』清寧(せいねい)天皇3年11月是月(このつき)の条で、「海表ノ諸蕃、並ニ使ヲ遣シテ調進(たてまつ)ル」とある。渡来系氏族の類別を示す語として諸蕃を用いたのは、815年(弘仁6)に成立した『新撰姓氏録(しんせんしょうじろく)』であって、皇別、神別とともに諸蕃を「三体」の一つとして項目をたてている。『日本書紀私記』の「弘仁(こうにん)私記序」には『諸蕃雑姓記』という書名があげられているので、渡来系氏族を類別するのに諸蕃の語で表すことは、『新撰姓氏録』より以前に始まっていたことが知られる。
[佐伯有清]
…帰化の語はもとは中華思想から出た語であるが,日本では中国の慣例に従ってこの語を用いていたにすぎず,とくに王化を強調する意図があったわけではない。また,皇別,神別と並べて氏族の系統を分類する場合には諸蕃の語が用いられ,蕃別という語は存在しなかった。
[初期の帰化人]
大陸とのあいだの人間の往来は,弥生時代以前からもつねにあったにちがいないが,それが急に盛んになったのは,応神朝のころ,すなわち4世紀末から5世紀初頭にかけての時期と思われる。…
※「諸蕃」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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