貿易などにおいて生ずる、通常の民間の保険では救済できない(引受けできない)リスクを政府がカバー(填補(てんぽ))する制度を定めた法律。昭和25年法律第67号。従来、日本独自の輸出振興政策であった輸出保険の根拠法として輸出信用保険法、のちに輸出保険法という名称であったが、輸入促進、内需拡大政策への転換による、輸入保険などの新設に伴い、1987年(昭和62)に現名称に改称した。2001年(平成13)には、同法に基づき貿易保険の実務等を行う、経済産業省所管の独立行政法人日本貿易保険(NEXI(ネクシー))が設立された。
2015年7月、貿易保険事業をいっそう効果的かつ効率的なものとするため、(1)NEXIの全額政府出資の特殊会社化、(2)政府による再保険制度および貿易再保険特別会計の廃止、(3)確実な保険金支払いを担保する制度の創設等を行うなどの法改正がなされた。2017年にはNEXIが株式会社に移行するなど、同法は、日本の貿易振興政策を定める法律として時代にあわせて変化している。
[河野公洋 2020年6月23日]
…また一般にモラトリアムが発動された国に対する輸出については,輸出保険の引受けが制限される。 戦後,日本の輸出保険は1950年公布の輸出保険法に基づき運営されてきたが,その後数次にわたる改正が行われ,とくに87年には対外取引に係るいくつかの政府保険制度が統合されて貿易保険法(1988年4月施行)となり,さらに97年にも改正された(1998年4月施行)。この貿易保険法は〈外国貿易その他の対外取引において生ずる為替取引の制限その他通常の保険によって救済することができない危険を保険することによって,外国貿易その他の対外取引の健全な発達を図ることを目的〉(1条)としている。…
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出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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