熱電対(読み)ネツデンツイ(その他表記)thermocouple

翻訳|thermocouple

デジタル大辞泉 「熱電対」の意味・読み・例文・類語

ねつでん‐つい【熱電対】

2種の金属線両端を接続して、ゼーベック効果による熱起電力が生じるようにした回路白金対白金ロジウム、銅対コンスタンタンなどの組み合わせが用いられる。

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精選版 日本国語大辞典 「熱電対」の意味・読み・例文・類語

ねつ‐でんつい【熱電対】

  1. 〘 名詞 〙 二種の金属線を接合して環状にし、接点間に温度差を与えると熱起電力を発生するようにした回路。二種の金属としては白金と白金ロジウム、銅とコンスタンタンなどが使われる。サーモカップル。〔電気工学ポケットブック(1928)〕

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改訂新版 世界大百科事典 「熱電対」の意味・わかりやすい解説

熱電対 (ねつでんつい)
thermocouple

熱起電力を利用する目的で2種の異なる金属線を接続したものを指す。2種の金属線を接続して閉回路を構成し,二つの接点を異なる温度に保つと,接点間に起電力(熱起電力という)を生ずる(ゼーベック効果)。この熱起電力は金属の種類と2接点の温度によって決まるから,一方の接点を既知の基準温度に保ち,他方の接点を感温部とし,精密な電圧計電位差計で熱起電力を計測すると,あらかじめ得ておいた較正目盛を用いて温度計として利用できる。熱電対は二つの接点をともに測温点として,温度差を求める際にも使われる。熱電対を利用した温度計(熱電温度計)は,種々の温度計の中でも信頼性も高く,比較的安価なので,一般に広く使われている。熱電対として用いられる金属としては,熱起電力が高く温度に対する直線性のよいこと,化学的に安定なこと,材料が得やすいことなどが要求されるが,代表的な熱電対金属としては,銅とコンスタンタン,鉄とコンスタンタン,クロメルアルメル,白金と白金ロジウムなどがある。熱電対回路の実用に際して有用な法則として,(1)1種類の均質な金属で作られた閉回路にはどのような温度差が与えられても起電力を生じない,(2)熱電対回路に新たに第3の金属線が加えられても,新たな2接点が同一の温度に保たれれば起電力は変化しない,(3)熱電対回路の接点のそれぞれの温度がT1T2のとき起電力がE1T2T3のときE2であったとすれば,接点温度がT1T3のときにはE3E1E2の起電力を発生することが知られている。
熱起電力
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「熱電対」の意味・わかりやすい解説

熱電対
ねつでんつい
thermocouple

熱起電力を利用して温度測定に用いるため、2種の金属線を一端で接合したもの。のように2種の金属線A、Bの接合部を、測定すべき温度Tに置き、他端を基準温度T0に保つ。T0は通常0℃にすることが多く、この部分は冷接点とよばれる。T0からは、第三の導体Cを接続して電圧計Vに導く。TT0が異なるときは、ゼーベック効果によりa、b間に熱起電力VABが発生するので、電圧計でVABを測ると未知温度Tを知ることができる。熱起電力は、温度T0T、および熱電対A、Bの材質のみによって決まる。導体Cの材質や電圧計の温度、熱電対の中間部の温度には無関係である。

 よく使用される熱電対としては、白金対白金‐ロジウム合金(室温から約1600℃)、銅対コンスタンタン(絶対温度約20Kから約700K)、金と鉄微量の合金対クロメル(約1Kから室温)などがある(コンスタンタンはニッケルと銅の合金、クロメルはニッケルとクロームの合金)。

[宮台朝直]

『国立天文台編『理科年表』各年版(丸善)』


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百科事典マイペディア 「熱電対」の意味・わかりやすい解説

熱電対【ねつでんつい】

熱起電力(ゼーベック効果)を利用するため2種の金属線を両端で接合して閉回路としたもの。熱電池とも。熱電温度計熱電対列に利用。→熱電気
→関連項目起電力極低温原子力電池コンスタンタン赤外線電池電流計放射高温計

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化学辞典 第2版 「熱電対」の解説

熱電対
ネツデンツイ
thermocouple

サーモカップルともいう.熱起電力を利用する温度計.図のようにA,B 2種類の金属の線の両端を接合し,一方の接点を定温に保てば,他方の接点の温度はその起電力から求められる.低温に保つ接点を基準接点または冷接点といい,普通0 ℃ を用いる.温度を測定する接点を温接点または熱接点という.温度一定の冷接点を図のように一体にして,導線で起電力測定用計器と接続する.白金-白金ロジウム(Rh 10%)のPR熱電対はルシャトリエ熱電対とよばれ,国際実用温度目盛の標準温度計に用いられている.PR熱電対のほかにクロメル-アルメル熱電対,銅-コンスタンタン(CC)および鉄-コンスタンタン(IC)熱電対などがよく用いられる.これらの熱電対については,基準熱起電力の表がある.高温測定用の白金-ロジウム合金の(Pt 60%,Rh 40%)-(Pt 80%,Rh 20%)の組合せは2000 ℃,タングステン-タングステンモリブデン(Mo 25%)は2600 ℃ まで用いられる.低温用にはクロメル-金・鉄などの熱電対が用いられる.

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「熱電対」の意味・わかりやすい解説

熱電対
ねつでんつい
thermocouple

熱起電力を利用して温度を測定する装置に用いられる1対の金属または半導体。2種の金属線の両端を接合し,一方の接点を定温 (普通は0℃) に保ち,他方の接点の温度を変化させたとき生じる熱起電力を測定によってあらかじめ求めておけば,逆に熱起電力から温度を知ることができる。銅-コンスタンタン熱電対は常温以下,クロメル-アルメル熱電対は常温以上,白金-白金ロジウム熱電対は高温の温度測定に普通は用いられる。これらの代表的なものについては熱起電力の基準値の表が与えられている。また多くの熱電対を直列に接続したものはサーモパイルともいわれ,放射エネルギーの測定に用いられ,きわめて感度がよい。熱電対はまた熱エネルギーを直接電気に変えるので直接発電への応用が試みられているが,効率はよくない。

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栄養・生化学辞典 「熱電対」の解説

熱電対

 →サーモエレメント

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世界大百科事典(旧版)内の熱電対の言及

【赤外線】より

…ただしその多くは,出力がそれほど大きくなく,他の目的に使用されるまでには改善の余地がある。
[検出器]
 熱起電力を検知する熱電対,あるいはそれを直列に連結した熱電堆,金属の電気抵抗の温度変化を検出するボロメーター,半導体の抵抗値の温度変化を検出するサーミスターなどは,いずれも赤外線の熱作用を利用した間接的検出器である。気体の熱膨張によって,その容器の一部を形成している薄膜が変形するのを光学的に高感度で検出するゴーレイ・セルも一時期は多用された。…

【光検出器】より

…光子効果型と異なり光のパワーに対する波長感度特性がほぼ平たんであり,長波長赤外域においても常温動作のものを作りうる点が特徴である。検出器は熱‐電気変換部によって特徴づけられ,熱電対温度計を用いた熱電対や熱電堆,抵抗温度計を用いたボロメーター,気体温度計を用いたゴレーセルGolay cell,焦電現象を利用した焦電検出器pyroelectric detectorなどが実用されている。(3)波動相互作用型 光の電磁波としての性質が直接物質との相互作用を誘起する現象を利用したもので,光ヘテロダイン検出器,パラメトリック検出器,ジョセフソン検出器などがある。…

※「熱電対」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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