赤帽(読み)アカボウ

デジタル大辞泉 「赤帽」の意味・読み・例文・類語

あか‐ぼう【赤帽】

《赤い帽子をかぶるところから》鉄道駅で、乗客手荷物を運ぶのを職業とした人。平成18年(2006)岡山駅での廃止をもって全国で営業終了。
「全国赤帽軽自動車運送協同組合連合会」の略。軽自動車を用いた運送事業者により構成される協同組合。昭和53年(1978)設立
[類語](1強力ごうりきポーター

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精選版 日本国語大辞典 「赤帽」の意味・読み・例文・類語

あか‐ぼう【赤帽】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 赤い帽子。
    1. [初出の実例]「赤帽は平民の赤心を顕す」(出典:朝野新聞‐明治二六年(1893)三月二五日)
  3. 構内旅客の荷物を運ぶのを職業とする人。赤い帽子をかぶるところからいう。手荷物運搬人。また一般に、軽運送業の通称や会社名。
    1. [初出の実例]「No.3 など番号を白く抜きたる赤帽(アカボウ)は、税関構内の担夫なれや」(出典:風俗画報‐二三九号(1901)投錨)

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「赤帽」の意味・わかりやすい解説

赤帽
あかぼう

駅構内において旅客から依頼された手回り品荷物を運搬する業者や人。欧米のポーターporterに倣い、山陽鉄道が1896年(明治29)姫路、岡山、尾道、広島の各駅に「荷運夫(にはこびふ)」を置き、赤色帯を巻いた帽子をかぶせたのが最初とされるが、類似のサービスはこれより早く関西鉄道が導入していたとの説もある。官鉄(のち国鉄、さらにJRとなる)もこれに倣って「手荷物運搬人」の構内営業許可を出すこととし、1897年の新橋駅を皮切りに主要駅に広がった。このときの服装は紺の腹掛けももひき半纏(はんてん)に赤色の鳥打帽(ハンチング)であった。

 これらの姿態が由来となって「赤帽」という呼称が普及し、それまでの軍人をさす用法(陸軍の一部軍帽に由来)にとってかわった。なお、1901年(明治34)より官鉄線の赤帽の制服が改められ、黒羅紗(らしゃ)の「背広」と、赤地に真鍮(しんちゅう)製の徽章(きしょう)を付した帽子となった。また、同年より横浜港の税関でも「赤帽」が導入されている。

 運搬の料金は所定の金額が定められていたが、遅くとも第一次世界大戦期にはチップを上乗せするのが一般的となった。車内携行制限以上の大きさの荷物であっても赤帽が運び込めば黙認されたといい、乗客にしてみれば手小荷物運賃を別途支払う義務から逃れるかわりに赤帽にチップを渡していたことになる。両大戦間期にはこの習慣がたびたび問題視され、鉄道当局がチップの収受を禁じたこともあった。1928年(昭和3)には京都駅と大阪駅で女性による「白帽」の営業も始まったが、普及せずに終わった。

 構内営業許可を得た事業者または個人が営業したが、業態は鉄道弘済会(こうさいかい)が運搬人を雇用する場合や駅ごとに組合が組織される場合など多様であった。東京駅の場合はもともと営業権をもつ請負人のもとに組織されていたが、1918年(大正7)、個人が営業権をもち組合を結成する方式に移行した。営業権は「株」とよばれ譲渡が可能であった。売買は親族や同郷の知己の者同士で行われることが多く、それが身元保証の役割を果たしていたという。利益の分配方法も多様であったと考えられるが、東京駅の場合は料金・チップとも組合がいったん収受し、組合員間で均等に分配する方式をとっていた。

 第二次世界大戦末期には旅行の抑止や国民徴用のため、廃止や縮小が行われた。東京鉄道局管内では46駅に赤帽が置かれていたが、東京・上野の両駅を除いて1944年(昭和19)に廃止された。戦後も、旅客の手荷物携行量減少などで1950年代後半までには退潮が明瞭(めいりょう)となり、1970年代以降は車輪付きのトランクが普及したことで衰退に拍車がかかった。東京駅の場合、戦前の最盛期に78人の赤帽がいたが、1958年(昭和33)45人、1973年26人(全国で400~500人)、1980年16人と減少していった。2000年(平成12)に上野駅で、2001年に東京駅で赤帽が廃業し、最後に残った岡山駅でも2006年に営業を終了した。

 とはいえ、駅構内での鉄道の手荷物運搬サービスの需要そのものは消滅したわけではない。1982年に東北新幹線が開業した直後には外国人旅行客からの要望により大宮駅で駅ビル経営会社による赤帽サービスが復活したことがあるほか、2012年には東京駅で宅配便事業者のヤマト運輸が構内でポーターサービスを復活させている。

[高嶋修一]

『山崎明雄著『思い出背負って――東京駅・最後の赤帽』(2001・栄光出版社)』『宮川健二著『赤帽、最後の日』(2003・新世研)』

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改訂新版 世界大百科事典 「赤帽」の意味・わかりやすい解説

赤帽 (あかぼう)

主要駅や接続駅の構内,連絡船内などで旅客の依頼する手回り品を運搬する人(ポーター)。常に赤い帽子をかぶっているからこの名がある。国鉄における赤帽は,1897年11月主要駅で旅客手荷物運搬人の営業を構内営業として許可したのが始まり。運搬料金は重さ,個数にかかわらず1回2銭であった。この手荷物運搬人は,昭和初期には仕事の内容,性別により,かぶる帽子を赤,青,白の3色に区別していた。赤帽は駅待合室と列車間の荷物運搬であるが,青帽は駅待合室と航路連絡船間,また駅と市街の一定個所間というように駅と駅外との荷物運搬を担当した。白帽は仕事の内容は赤帽と同じだが,赤帽が男性であるのに対し白帽は女性従業員のみで営業を行った。青帽,白帽とも現在はない。赤帽の人数は年々減少し,1980年1月当時26駅で86名が営業しており,運搬料金は駅や荷物の大小により異なるが,1個につき50円から350円まであった。97年現在では,《時刻表》に〈赤帽のいる駅〉と表示されているのは東京,上野,名古屋,京都,岡山の5駅だけであったが,2006年岡山駅の赤帽が廃止。日本の鉄道から赤帽が消えた。
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百科事典マイペディア 「赤帽」の意味・わかりやすい解説

赤帽【あかぼう】

(1)鉄道の駅構内で旅客の依頼する手回り品運搬を業とする者。名は着用する赤い帽子にちなむ。日本では1897年に始まった。構内旅客営業の一種で,鉄道事業者の承認と監督下に営業する。(2)全国赤帽軽自動車運送協同組合連合会の略。1975年,軽運送業として誕生し,1978年運輸省認可。44協同組合,組合員数1万名,車両台数1万2000台。出資金総額2100万円。(2013年)

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