海洋には,水温,密度のような状態や塩分,溶存物質濃度などの性質が,鉛直方向に大きく変化する層がある。これを躍層と呼ぶ。夏季,太陽の放射の影響で深度数十mあるいはそれ以浅の表層に生ずる水温や密度の躍層を表層躍層といい,深度数百m~1000mの層に恒常的に存在する躍層を主躍層という。最近,数千mの深海の下層にも,恒常的な躍層の存在する場合があることが見いだされた。夏季の強い日射を受け,表面近くから深度20~30mにかけての層に表層躍層が形成されている場合,その海面上を強い低気圧が通過して強風が吹き続けると,表層では海水はよく攪拌され表面から深度数十mまでにわたり一様となり,この層の下に新たな躍層が形成される。このように,表層躍層は時間とともに変化する。中緯度海域では,夏季には表面近くから20~30m程度の浅い層に形成され,冬季には偏西風の作用により生じた100m近くにも及ぶ表面混合層の下に形成される。季節により深度が変わることから表層躍層は季節躍層とも呼ばれる。
躍層の鉛直構造を詳細に調べてみると,この層を特徴づけている温度や塩分などの変化は深度に対して連続的ではなく,数cm~数mごとに不連続的に起こっていることがわかった。すなわち,躍層は数cm~数mの均一な性質をもつ海水の薄板の積重ねから成り立っていることがわかった。この板の水平スケールは数kmから数十kmにも及ぶとみられる。躍層の生成機構については,まだ十分よくわかっていない。躍層で特徴づけられる海洋の成層構造は,流体としての海水のさまざまな流動現象と密接に結びついており,海洋大循環や内部波のような力学的現象を支配する重要な因子である。
執筆者:寺本 俊彦
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出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…春から夏にかけては昇温期で,表面水温が徐々に上昇し,昇温は深層に及んでくる。夏になると表層は年間での最高水温を示し,表層と深層の間に水温変化の大きい躍層(やくそう)が発生する。夏季にはこのように表層,躍層および深水層の3層に分けられる。…
※「躍層」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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