婚姻や養子縁組など身分上の法的効果を生じさせる法律行為。身分行為は、届出を必要とする要式行為であることが多く、当事者の真実の意思が重視され、民法総則に定められる行為能力の規定がそのまま適用されない点で、財産法上の法律行為と異なる特殊性をもっている。たとえば、民法総則では、成年被後見人の法律行為は取り消すことができるとされている(民法9条)。しかし、婚姻については、成年被後見人もその成年後見人の同意なしにすることができる(同法738条)。身分行為は、通常、大きく三つに分けられる。つまり、身分の取得・変更・喪失を直接的に生じさせる形成的身分行為(たとえば婚姻、養子縁組、認知など)、自分の身分に基づいて他人の身の上に身分法上の支配を及ぼす支配的身分行為(たとえば親権の行使、後見など)、身分関係に付随する付随的身分行為(たとえば婚姻の際における氏の決定、夫婦財産契約、相続の限定承認や放棄など)である。
[高橋康之・野澤正充]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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