成年後見制度において、成年被後見人、すなわち精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者について、家庭裁判所から後見開始の審判を受けた者に付される保護者をいう(民法8条・843条)。
1999年(平成11)の改正民法(2000年4月1日施行)により、禁治産、準禁治産の制度が改められて、成年後見制度が導入された。被後見人が成年者か未成年者かを区別することが必要になったので、民法をはじめとする関連の法律では、共通する事項には「後見人」、その他は「成年後見人」「未成年後見人」と区別した用語を用いている。
改正前の禁治産制度の下では、夫婦の一方が禁治産宣告を受けたときはその配偶者が後見人になったが、改正後の成年後見人は家庭裁判所が職権で適任者を選任する。また、従来は後見人は1人でなければならなかったが、改正後は複数の後見人を置くこともでき、法人も成年後見人になることができることとなったので、医療や福祉、法律問題など、それぞれの専門領域での成年後見人を活用することが可能になった。成年後見人の選任に際しては、成年被後見人の心身の状態や生活、財産の状況、成年後見人となるものの職業、経歴、成年被後見人との利害関係の有無、さらに、法人が成年後見人になるときは、法人の行う事業の種類や内容、法人およびその代表者と成年被後見人との利害関係の有無、それに成年被後見人の意見その他一切の事情を考慮して判断される(民法843条)。
成年後見人には、成年被後見人の財産的行為についての包括的代理権と、日用品の購入など日常生活に関する行為以外の行為について、成年被後見人が行った契約など法律行為の取消権が付与される。もっとも、身分行為(婚姻、認知、養子縁組など)には、特別の定めがある場合を除いて、代理権・取消権は及ばない。
成年後見人が複数の場合、各成年後見人は原則として単独で権限を行使することができるが、家庭裁判所は、職権で数人の成年後見人が事務を共同して行うか、分掌して権限を行使するかを定めることができる。なお、取引の相手方は成年後見人の一人に対して意思表示すれば足りる(民法859条の2)。
後見人の職務内容、権限行使上の制限(利益相反行為の禁止など)、権限行使に際しての注意義務などについて、民法第853条以下に規定されている。とくに重要な点として、成年被後見人の生活、療養看護および財産の管理を行うにあたっては、本人の意思を尊重し、心身の状態および生活の状況に配慮しなければならないこと(同法858条)、成年後見人が本人にかわって、その居住の用に供する建物またはその敷地の売却、賃貸、抵当権設定などの処分を行うときは、居住環境の変化が本人の心身や生活に与える影響が重大であることから、家庭裁判所の許可を要すること(同法859条の3)が明記されている。そのほか、辞任・解任・欠格事由、成年後見監督人の選任などについて、同法第844条以下に規定がある。なお、改正前の規定により禁治産の宣告を受けた禁治産者(成年者)の後見人は、改正後には成年後見人とみなされる。
[伊藤高義]
『額田洋一・秦悟志編『Q&A成年後見制度解説』第2版(2003・三省堂)』▽『新井誠・赤沼康弘・大貫正男編『成年後見制度――法の理論と実務』(2006・有斐閣)』
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