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軟性下疳菌Haemophilus ducreyiを病原体とする性病。性交による感染後1~7日に外陰部に1~数個の赤い小さな隆起が発生したのち,化膿して潰瘍となるが,その潰瘍の縁は深くえぐれている。男では陰茎亀頭の周辺,包皮の内側など,女では大小陰唇,腟粘膜などに発生しやすい。さらに片側または両側の鼠径(そけい)リンパ節が痛みを伴ってはれてくるので,有痛性横痃(おうげん)とも呼ばれている。この横痃(〈よこね〉ともいう)は化膿するので,内容の膿が皮膚を破って外へ出ていく。この膿を殺菌,または軟性下疳菌を培地で増殖させたのちに殺菌して作製したワクチンを皮内注射し,48時間後に発赤の大きさを判定する検査法を伊東反応といい,軟性下疳の患者または既往者では陽性となる。治療として,サルファ剤またはテトラサイクリン系の薬剤の内服療法が5~7日間行われるが,必要に応じて長期間にわたり治療される。
執筆者:岡本 昭二
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
軟性下疳菌(デュクレー桿(かん)菌)Haemophilus ducreyiを病原体とする性病で、びらんした皮膚や粘膜より感染する。軟性下疳菌は、1889年イタリアの皮膚科医デュクレーAugosto Ducreyによって発見されたグラム陰性桿菌で、罹患(りかん)部の潰瘍(かいよう)に存在する膿(のう)中に認められる。
性行為によって感染後3~5日の潜伏期を置いて発病する。男性では陰茎に、女性では陰唇や腟(ちつ)入口などに小膿疱(のうほう)ができ、まもなく自壊して大豆大の痛みのある潰瘍を形成し、悪臭がある。潰瘍からの膿が付着して周囲に潰瘍が多発することもある。初発症状出現後2週間内外に鼠径(そけい)部リンパ節が赤く腫(は)れて化膿することがあり、有痛性横痃(おうげん)とよばれている。治療としては、サルファ剤またはテトラサイクリンが有効で、これによって軟性下疳は急速に減少し、きわめてまれになってきたが、アフリカ諸国には多いと報告されている。
[岡本昭二]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…おもに性交によって人から人へ感染していく病気の総称で,梅毒,淋病,軟性下疳(なんせいげかん)および鼠径(そけい)リンパ肉芽腫(第四性病)が含まれる。俗に花柳(かりゆう)病などともいわれた。…
※「軟性下疳」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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