改訂新版 世界大百科事典 「輸送園芸」の意味・わかりやすい解説
輸送園芸 (ゆそうえんげい)
野菜,果実,花卉(かき),観葉植物などを集約的な管理で栽培することを園芸というが,園芸農業は一般に,その生産物が鮮度が尊ばれる品目であることや,需要が都市に多いことなどから,最初は都市近郊で発達をみている。その典型は,ガラス温室やプラスチック・ハウスの中でメロン,ブドウ,バラ,カーネーションなどが高度の技術と集約的な管理で栽培される〈高等園芸〉であるが,このような園芸農業が交通輸送機関の発達により大都市消費市場から遠く離れた遠郊で発展し,輸送によって消費市場に出荷されているような園芸農業が輸送園芸である。園芸農業ではガラス温室などをはじめ暖房,換気,灌水などの施設整備に多額の資本を必要とし,加温・灌水に光熱・水道費がかかるが,輸送園芸の発達は,これらの施設整備費や暖房費が少なくてすむ,気候の温暖な地域に多くみられる。日本では四国,九州の西南暖地,世界的にはアメリカのカリフォルニア,フロリダ,ヨーロッパの地中海沿岸地域などがその典型である。
→施設園芸
執筆者:河野 敏明
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報