出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報
中国の主として元代,諸王や勲臣が保有する遊牧集団,あるいは長城地帯,華北,一部は江南にも設定された所領,もしくは所領の人民を指す。モンゴル語ではアイマクに当てられる。投下の語は,五代軍閥の私兵の隊伍に淵源し,直接には遼代の頭項,頭下に由来する。遼は中国から流入ないし略奪してきた農民たちを諸王や功臣などの遊牧領主に分与して集落を作らせ,その経済基礎とした。頭項とは集団の頭,頭下は従属民の意味で,元代になると音通から投下と書かれる方が普通になる。御位下(ぎよいか)と別称された帝室所属のものを除き,20前後の投下が存在した。モンゴルの有力者は,長城地帯以北の遊牧地本領のほか,旧金国領の華北と旧南宋領の江南に投下を分与されて,その税収で本領の遊牧経済を支えた。元朝は中国内地の投下領についてはしだいに制限を強化し,州路の一般行政に編入して,徴税や人事の裁量権限の一部だけを領主にゆだねるように改めていった。
執筆者:杉山 正明
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