日本大百科全書(ニッポニカ) 「通貨協定」の意味・わかりやすい解説
通貨協定
つうかきょうてい
monetary agreement
2国間や多国間の政府や中央銀行が通貨に関する資金決済、外国為替(がいこくかわせ)レートの安定、信用供与などを目的に結ぶ協定。最近では、通貨危機に際して互いに外貨を供給しあう通貨交換(スワップ)協定をさすことが多い。日本はアメリカをはじめ、中国、韓国、インド、東南アジア諸国連合(ASEAN)などと通貨交換協定を結んでいる。通貨交換協定は、急激な資本流出で対外的な支払い不能や外国為替介入資金の不足に陥るのを防ぐ目的で結ばれる。自国通貨を担保に、基軸通貨などの外貨を融通しあうことが多い。
歴史的には、第一次世界大戦後のイギリス経済衰退に伴う英ポンド下落を機に、1936年、外国為替相場の安定のためイギリス、アメリカ、フランスは三国通貨協定を結んだ。これが第二次世界大戦後、発展して国際通貨基金(IMF)となり、ドルを基軸とする通貨体制が整った。一方、共産圏には旧ソ連・東欧諸国間の通貨レートを定めた共産圏経済相互援助会議(コメコン)通貨協定があった。しかし1971年のニクソン・ショックで、西側主要国間の外国為替レートは変動相場制へ移行し、為替相場安定のための通貨協定は徐々に姿を消した。
1990年以降、金融のグローバル化が進み、メキシコ通貨危機(1994年末)、アジア通貨危機(1997年)など、経済不振に陥った国・地域から短期間に資本が流出する通貨危機が頻発するようになった。このためIMFを補完する目的で、さまざまな通貨スワップ協定が結ばれている。日本政府は2000年、タイのチェンマイで中国、韓国、ASEANと外貨準備のドルを融通しあう「チェンマイ・イニシアティブ」に合意し、これに基づく通貨交換協定を各国と結んでいる。2008年以降の世界金融危機に際しては、日本銀行はアメリカ連邦準備制度理事会(FRB)などの中央銀行とのスワップ協定を締結した。
[編集部]