遊動生活ともいう。動物の空間利用方式の一つ。運動能力に比較して相対的にかなり広い地域を巡回利用するもの。その広さや巡回利用のしかたはさまざまである。元来は人間の遊牧に似た生活をする有蹄類についていわれたが,今日ではもっと広い意味で使われる。遊動をする動物は原則として拠点をもたず,日によって利用区域を異にするが,年間を通してみればかなり規則的な巡回パターンを示す生活を営む。その地域を排他的に占有することはないが,利用のしかたは多少とも占有的である。ふつうは群れ生活の動物についていわれることが多い。
しかし実際には,こうしたいわば〈典型的〉な遊動生活だけがみられるのではなく,動物の中には,広い地域内を遊動するものから狭い地域内に定住するものまで,さまざまな中間的なものがあってその間に線をひくのはむずかしい。例えばニホンザルの暮し方は,遊動生活ともいえるし定住生活ともいえる。また遊動生活と放浪生活の間にも線はひきにくいが,この場合には具体的な知識の不足も原因となる。例えば巣立ち後繁殖年齢に達するまでの2~10年間の海鳥の生活は,遊動か放浪かは不明である。さらに所々に滞在(定住)しながら遊動をする場合と,夏・冬または乾季・雨季の2ヵ所の定住地域間の季節的移動(例えば鳥の渡り)を厳密に区別するのもむずかしい。
動物の移住は,究極的には食物や水のような必要資源の変化を生ずる気候その他の環境の変化に対する反応または適応であり,この変化が小さければ定住,四季のように規則的なら渡りで,遊動はその中間的な段階にあるものと考えることができる。
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執筆者:浦本 昌紀
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
…また,ひじょうに広い地域ではあるが一定した地域を何週間もかけて巡回している草食獣の場合には,定住しているというかどうかは主観的なものでしかない。遊動nomadismと呼ばれるこの移動の仕方は,遠洋魚の回遊などとともに中間的な現象といえる。 このように中間的な現象はほかにもあり,狭義の移動には実に多様なものが含まれる。…
…遊牧とは,定住せずにキャンプ生活をする牧畜を指し,まずそれは,居住地を変えず家畜を飼養する定着的牧畜に形式的に対立している。ここで定着的牧畜といっても,家畜を舎飼いしているもののみを指しているわけではない。毎日,家畜を野に放ち,放牧しながら,居住地を固定しているものもあり,居所を移動しないかぎり定着的牧畜というほかはない。遊牧か否かの判定は家畜の移動の有無ではなく,それを所有管理する牧畜民の居住地の移動の有無によって区別される。…
…また,ひじょうに広い地域ではあるが一定した地域を何週間もかけて巡回している草食獣の場合には,定住しているというかどうかは主観的なものでしかない。遊動nomadismと呼ばれるこの移動の仕方は,遠洋魚の回遊などとともに中間的な現象といえる。 このように中間的な現象はほかにもあり,狭義の移動には実に多様なものが含まれる。…
※「遊動」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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