道場法師(読み)どうじょうほうし

精選版 日本国語大辞典 「道場法師」の意味・読み・例文・類語

どうじょう‐ほうしダウヂャウホフシ【道場法師】

  1. 仏教説話に登場する伝説的な、強力法師尾張国愛知県)の出身元興寺の僧。その説話は「日本霊異記‐上」「扶桑略記」「水鏡」「本朝文粋」などに収められている。また、一般的に、鬼のように強い僧のこと。後世大太法師(だいだぼっち)の祖といわれる。

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改訂新版 世界大百科事典 「道場法師」の意味・わかりやすい解説

道場法師 (どうじょうほうし)

《日本霊異記》にみえる雷より授かった子で,元興寺の僧。尾張国阿育知(あゆち)郡片蕝(かたわ)里の農夫が田に水を引くときに童形の雷が落ちて来た。金杖で打とうとしたところ,雷は命を乞い,子を授けることを約束し,楠の竹の葉を浮かべた水槽によって昇天した。農夫には頭に蛇を巻いた男子が生まれた。その子は,10余歳で朝廷の力王と力を競べ,勝つ。石を投げるときに3寸の深さに足跡がついたという。元興寺の童子となり,鬼を退け,鐘堂の怪を絶つ。のち,優婆塞(うばそく)となり,寺の田に水を引くのを妨げた諸王を懲らしめた。出家得度して道場法師と称し,大力で知られた。孫は尾張宿禰久玖利(くくり)の妻となったが,やはり大力の逸話を残している。これらの伝承は,雷と農耕との密接な関係を示している。《打聞集(うちぎきしゆう)》に,生まれた子が両親を富裕にしたと記すのは,道場法師を豊穣をもたらす雷の子としてとらえたものであり,雷が桑をたよりとして昇天したとも記すのは,雷と養蚕との関係をうかがわせるものである。《台記》に,石山寺に道場法師がつめでかいて水を出した井や彼の足跡が残されていることを記すのは,巨人説話的である。おそらくだいだらぼっちの伝承の反映があろう。雷と農夫の説話は中国にあり,雷が足跡を残した伝承や雷の精をうけて生まれた人が剛勇を好んだ伝承も中国にみえる。古代雷神信仰を知るうえで重要な人物である。
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世界大百科事典(旧版)内の道場法師の言及

【雷】より

…雷が雨を伴うので雷神は古くから水神の属性をもっていた。《日本霊異記》の道場法師の伝説では,雷をとらえた話と水を得た話とがなんの関連もなく記されているが,《今昔物語集》の越後の神融聖人の話では,とらえられた雷が水を与えることを約束して天に帰ることを得ている。各地に伝えられる雷石,雷松の伝説中には雨乞いと関連したものがある。…

※「道場法師」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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