遷移モーメント(読み)センイモーメント

化学辞典 第2版 「遷移モーメント」の解説

遷移モーメント
センイモーメント
transition moment

系の定常状態固有関数ψnψm とし,電気双極子モーメントerとするとき,

ψm*erψn
を状態nm間の遷移モーメントという.ψm*ψm の複素共役関数であり,積分は全空間にわたって行われる.この積分が0のときは,遷移確率も0となるので選択則を決定する際は重要な因子となる.また,遷移モーメントの方向は,吸収あるいは放出帯の分極の方向を決定することになるので,これらの帯の帰属に際しては,帯の位置する波長,帯の強度と並んで,大きな役割を果たしている.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「遷移モーメント」の意味・わかりやすい解説

遷移モーメント
せんいモーメント
transition moment

量子力学多重極放射・吸収を扱う場合,電磁場と粒子系のハミルトニアンを,粒子系の範囲が波長に比べて小さいとして展開すると,電気双極子モーメント電場磁気モーメント磁場,電気四極子モーメントと電場の勾配,という積の項が現れる。摂動論では,放射・吸収はこれらの各項が働いて起る遷移と考えることができる。また遷移確率前述の各種のモーメントを粒子系の始状態と終状態ではさんでつくる行列要素の2乗に比例する。このとき着目する遷移に寄与するモーメントの行列要素を,その放射・吸収の遷移モーメントという。

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