空間内の任意の点に働く電気的な力を、この点の電場または電界という。時間に依存しない電場を静電場という。以下これについて説明する。初めに空間が真空であるとする。二つの静止している電荷q1、q2の間の距離がrであるときに、この二つの電荷の間に働く力FはF=kq1q2/r2で与えられる。Fは、q1、q2が同符号のときは斥力で、異符号のときは引力である。これがクーロンの法則とよばれるものである。力Fは静電力または静電的クーロン力とよばれる。比例定数kは単位系により異なる。非有理静電単位系ではk=1である。MKSA単位系ではk=1/(4πε0)である。ε0は真空の誘電率であり、ファラッド/メートルを単位として、8.854×10-12の数値をとる。電荷qの単位はクーロン、距離rの単位はメートルで、これらの単位を用いて、F=q1q2/(4πε0r2)が成り立つ。近年一般には、とくに電気工学においては、MKSA単位系が使用される。
空間には一般にはいろいろの位置にいろいろの電荷が分布している。いま、これらの電荷はすべて静止しているとする。このとき空間内にさらに一つの、いわゆる探り電荷q0を挿入する。このq0に働く力はq0とすべての他の電荷との間に働くクーロン力(ベクトル)の総和であるが、これは明らかにq0に比例する。とくにq0=1のとき、この電荷に働く力がこの電荷の位置の電場である。電場は明らかにベクトルである。 (a)・(b)は、それぞれ1個の正電荷および負電荷によって空間の各点に生じる電場を示す。探り電荷は、空間の各点において、そこの電場の方向、向きに移動する。この方向、向きを連ねていくと一つの曲線が得られる。この曲線上の各点での接線はその点の電場の方向、向きを表す。この曲線を電気力線という。空間内の電場の分布はこのような電気力線を多数書くことによって示すことができる。 は絶対値が等しい正負の電荷が並んでいる場合の電気力線のようすをしめす。 は一様に正に帯電した半無限大導体によって生じる電気力線を示す。導体では電荷は表面にしかなく、これに伴って導体の内部には電場は存在しないことがいえる。それは、もし導体の内部に電荷が存在すれば、それに伴って生じる内部の電場によってこの電荷は移動することとなり、すべての電荷が静止しているとしているただいまの前提に反するからである。静電場Eは電気ポテンシャルまたは電位VとE=-gradV=-∇Vでつながっている。ここにgrad≡∇は勾配(こうばい)とよばれるベクトル演算子である。したがって、空間におけるEのようすはVによっても表すことができる。Vが等しい点を連ねた曲面を等電位面という。 において破線は等電位面を表す。
以上は空間が真空の場合であったが、物質の中では、クーロン力はF=q1q2/(4πεε0)r2となり、したがって電場はE=E0/εとなる。ただし、E0は真空の場合の電場であり、εは誘電率とよばれる物質定数である。εはかならず1よりは大きく、したがってつねにE<E0である。空間に電場Eが存在すると、空間にこのEで決まる静電エネルギーが蓄えられる。単位体積当りの静電エネルギーuは、空間の誘電率がεのとき、u=(1/2)εε0E2で与えられる。
以上、静止している電荷によって生じる電場、すなわち静電場について説明した。電荷が運動していても、この静電場は生じるが、それ以外に、電荷が運動すると磁場が発生し、また、磁場が存在すると、運動する電荷はこれから力を受ける。磁場が時間的に変化すると、電荷が静止していても力を受ける。これらのことは、すべてただいまは考慮されていない。
[沢田正三]
電界ともいう。コンデンサーの両極板の間に電荷をおくと,電荷に電気的な力が働く。このように,ある場所に静止している電荷に力が働くとき,その付近には電場があるという。電荷に働く力をFとすると,Fは電荷の電気量qに比例するので,これをF=qEと表す。Eは単位電荷(1Cの電荷)に働く力で,このEを電場の強さ,あるいは単に電場と呼ぶ。電場Eは力Fと同じくベクトルで,その大きさと方向は一般に場所によって変化する。すなわちEはベクトル場である。各点における電場の方向を結んでできる曲線を電気力線という。電気力線の接線が,その点における電場の方向を表す。図のように電気力線を何本か描けば,電場のようすを定性的に示すことができる。この例では,電荷qに働く力Fは,2枚の極板上に分布する電荷がqに及ぼすクーロン力である。このように,電荷分布を源としてつくられる電場をクーロン電場という。また時間的に変化する磁場があると,電磁誘導の法則により,磁場を囲む形の渦状の電場ができる。この電場を誘導電場という。クーロン電場の電気力線は,正の電荷からわき出し,負の電荷に吸いこまれる。それに対し誘導電場の電気力線は閉曲線となり,わき出しや吸いこみをもたない。電場の強さの単位はV/mである。
執筆者:加藤 正昭
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…すなわち,1904年に二極真空管が,次いで06年に三極真空管が発明され,エレクトロニクスの発展が始まった。磁気磁石【広重 徹】
[電場と磁場]
電気の諸現象は電荷(電気量)と電流によりひき起こされる。電流は電荷が動いている状態であるから,基本は電荷である。…
…電場と磁場の総称。二つの電荷q1,q2が距離rだけ離れて存在しているときに,その間には,の力が働く(クーロンの法則)。…
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出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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