選択的夫婦別姓(読み)せんたくてきふうふべつせい

知恵蔵「選択的夫婦別姓」の解説

選択的夫婦別姓

結婚した時に夫婦か別姓かを自由に選択できる制度。2010年現在、千葉景子法務大臣選択的夫婦別姓制度の導入を唱えており、同年1月に召集された通常国会での成立を目指す考え示している。
現在、労働人口の4割以上は女性である。仕事上のコミュニケーションを円滑にするため、結婚後も旧姓を使い続ける女性は少なくないが、パスポートや運転免許証の姓名は原則戸籍名で表記しなければならず、銀行口座や資格証明書も旧姓は使えない。こうした暮らしの不便の解消の他、女性が一方的に改姓を強いられている、娘に家名を継がせたいなど様々な理由で、1990年代頃から夫婦別姓の実現がさけばれてきた。96年には選択的夫婦別姓を認める民法改正案も答申されたが、成立の見通しは立たないままだった。
2010年2月19日、法務省は女性の社会進出が進む時代背景や家族の形の多様化を踏まえ、民法(第750条:夫婦の氏、第790条:子の氏、第791条:子の氏の変更、第810条:養子の氏)の一部改正を政策会議で提示した。改正の内容は、(1)結婚時にいったん選んだ姓は変えられない、(2)子の姓は結婚時に夫か妻のどちらかの姓に決めて兄弟姉妹の姓を統一する、(3)すでに結婚している夫婦も、配偶者との合意があれば、法施行後1年以内に限り別姓に変えられる。ただし子の姓は変えられない、というもの。しかし、亀井静香金融大臣は「家族のきずなを弱める」と夫婦別姓への反対明言民主党の内部でも異論があるため、会期内での法案成立は微妙なものとなっている。
夫婦別姓に対する国民の意識も様々である。2006年の内閣府大臣官房政府広報室「家族の法制に関する世論調査」によると、姓は「先祖から受け継がれてきた名称」と答えた人が45.1%で、姓を大切なものと考える人が多い。婚姻による姓の変更は仕事の上で何らかの不便を生ずることがあると思うと答えた人は46.3%、ないと思うと答えた人は50.9%で拮抗(きっこう)している。また、少子化の影響で一人っ子が増えたからか、男性の兄弟のいない女性が姓を変えると実家の姓がなくなってしまうなどの理由で結婚婚姻をするのが難しくなることがあると思うと答えた人は41.9%にものぼった。なお、2009年10月の朝日新聞世論調査では、選択的別姓に賛成が48%で、反対の41%を超えている。選択的夫婦別姓をめぐって、今後も国民的な論議が必要とされている。

(島村由花  コラムニスト / 2010年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ)「選択的夫婦別姓」の解説

選択的夫婦別姓
せんたくてきふうふべっせい

婚姻関係にある2人が、両者の姓を統一するか、別姓を名のるかを選べる制度。選択的夫婦別氏ともいう。夫婦同姓、夫婦別姓以外に、両者の姓をつないだ結合姓を選択できる場合もある。選択的別姓を選んだ夫婦の子供の姓については、(1)成人後などに子供が選択する、(2)婚姻時に決めた姓を名のる、(3)結合姓を名のる、など多様な制度が存在する。1970年代に女性の社会進出が世界的に進み、夫婦別姓を認めるべきだとの機運が盛り上がった。一方で、姓は家族制度の根幹であるとして夫婦同姓を堅持すべきとの主張もあり、両者の主張を盛り込んだ、どちらをも選択できる法改正がヨーロッパを中心に進んだ。このため世界ではイギリス、イタリア、ドイツ、スウェーデン、ロシア、ブラジル、タイ、シンガポール、オーストラリアなど多くの国が選択的夫婦別姓を採用している。州ごとに規定の異なるアメリカでもカリフォリニア州など多くが選択的夫婦別姓をとっている。なお歴史的に血縁を重んじる傾向が強い中国、韓国、ベトナム、サウジアラビアなどでは伝統的に夫婦別姓である。

 日本では民法第750条で夫婦同姓を規定しているが、夫婦別姓の導入を求める運動が広がり、法制審議会(法務大臣の諮問機関)民法部会身分法小委員会は1996年(平成8)、選択的夫婦別姓の導入などを柱とする民法改正要綱を答申した。しかし、自由民主党を中心に、国会議員のなかに強く夫婦別姓に反対する勢力があり、民法改正は進んでいない。

[矢野 武 2021年6月21日]

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