邏卒(読み)ラソツ

精選版 日本国語大辞典 「邏卒」の意味・読み・例文・類語

ら‐そつ【邏卒】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 見まわりの兵士。巡邏の兵卒。
    1. [初出の実例]「京尹などの歴々の官人も、保卒邏卒のごとき賤役も通じて、これを所由と云と」(出典:随筆・秉燭譚(1729)五)
    2. [その他の文献]〔新唐書‐温庭筠伝〕
  3. 明治の初め、各府県に置き、警察事務に従事させた職。明治六年(一八七三)取締組、捕亡吏などとともにすべて番人と改称し、同七年等外吏に准じ、同八年ふたたび旧名に復し、同年巡査と改称された。
    1. [初出の実例]「府下取締として邏卒三千人被備置候」(出典:太政官第五百五十三‐明治四年(1871)一〇月二三日)

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改訂新版 世界大百科事典 「邏卒」の意味・わかりやすい解説

邏卒 (らそつ)

明治初年の警察官。ポリスpoliceの訳語で巡邏する卒の意味。1871年(明治4)10月東京府で3000名の邏卒を設けたのが最初。維新後,東京府の治安維持にあたった府兵は諸藩から選抜された藩兵であるが,いちじるしく統制欠け,そのうえ同年7月の廃藩置県で廃止せざるをえなくなった。そこで欧米のポリスを模範に邏卒をおくこととし,取締組を編成,邏卒総長には川路利良が任じられた。3分の2にあたる2000名が鹿児島県士族であること,帯刀を禁じ3尺棒を持たせたのが特徴。72年8月司法省管轄に入り新設の警保寮に属し,73年11月内務省新設とともに同省へ移され,74年1月東京警視庁が設置されて巡査と改称された。邏卒の称は東京以外の府県でも捕亡掛の後称として使われ,のちに巡査と改称された。
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山川 日本史小辞典 改訂新版 「邏卒」の解説

邏卒
らそつ

明治初期,治安維持を目的に設置された組織および職名。巡査の前身。1871年(明治4)10月神奈川県横浜に,その直後東京府にも設置された。当初邏卒は官名ではなく,取締組子の総称として用いられポリスとも称された。72年5月東京府下の取締組を邏卒と改称,8月の司法職務定制に地方邏卒が規定された。その後巡査と改称した。

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