日本大百科全書(ニッポニカ) 「酸化スズ」の意味・わかりやすい解説
酸化スズ
さんかすず
tin oxide
スズと酸素の化合物。次の2種の化合物がよく知られている。ほかに三酸化二スズSn2O3や、さらに酸素の含有量の多いSn3O4なども報告されている。
(1)酸化スズ(Ⅱ) スズ(Ⅱ)塩溶液にアンモニア水を加えて生じた沈殿を脱水してつくる。青黒色の金属様結晶。水に不溶。両性で酸、アルカリに溶ける。空気中で熱すると220℃以上で酸化スズ(Ⅳ)になる。還元剤として用いる。スズ(Ⅱ)塩を加水分解すると水和物3SnO・H2Oが得られる。これは[Sn6O8H4]のようなクラスター化合物である。
(2)酸化スズ(Ⅳ) 天然には錫石(すずいし)として産出する。金属スズを空気中で熱するか、スズを硝酸に溶かしたものを強熱して得られる。無色の結晶。水、アルカリ、アンモニア水に不溶。水酸化アルカリと溶融するとスズ(Ⅳ)酸塩となる。電気伝導性がある。炭素または水素と熱すると金属スズを得る。錫石は金属スズの原料、ガラスや金属の研摩材、エナメルや乳色ガラスの製造などに用いる。スズ(Ⅳ)塩水溶液をアンモニアなどで加水分解すると水和物SnO2・H2Oが得られるが、これは通常スズ酸とよばれるゼラチン状沈殿で、乾燥するとガラス状となる。
[守永健一・中原勝儼]