釉裏紅(読み)ユウリコウ

デジタル大辞泉 「釉裏紅」の意味・読み・例文・類語

ゆうり‐こう〔イウリ‐〕【×釉裏紅】

陶磁器の装飾技法の一。また、その陶磁器。染め付けと同様の技法で、下絵付け呉須ごすのかわりに銅系統の彩料を用いて紅色に発色させるもの。中国、元代に景徳鎮窯けいとくちんようで始まった。日本では俗に辰砂しんしゃともいう。

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精選版 日本国語大辞典 「釉裏紅」の意味・読み・例文・類語

ゆうり‐こうイウリ‥【釉裏紅】

  1. 〘 名詞 〙 磁器の釉下に、銅呈色の紅色の模様のあるもの。還元炎焼成によって、銅が赤く発色する。中国、元代の景徳鎮窯で作り出された。

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百科事典マイペディア 「釉裏紅」の意味・わかりやすい解説

釉裏紅【ゆうりこう】

釉下彩技法で,銅を呈色剤に用い,還元炎焼成で赤(紅)く発色させる技法,またはその作品。一般的に絵筆文様が描かれているものをいい,器物に色釉として使われている場合〈紅釉〉という。美しい紅色を出すのが困難な顔料で,灰色に仕上がるものもある。中国では晩唐〜五代の長沙窯(ちょうさよう)に早い作例が見られ,紅釉としては鈞窯(きんよう)が青磁釉とともに用いた。本格的には景徳鎮窯において,白磁が完成した元時代の14世紀前半,青花(染付)磁器に先立って始められた。続く明時代初頭の洪武年間ごろは,一時青花磁器と並び景徳鎮の主要製品となる。清朝では焼成技術の発展により,釉下に青花と釉裏紅を同時に焼成した作品も多く作られた。朝鮮半島において,この技法,作品は〈辰砂(しんしゃ)〉と呼ばれ,早くも12―13世紀の高麗青磁に部分的に用いられていた。また白磁にも18世紀以降広く用いられた。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「釉裏紅」の意味・わかりやすい解説

釉裏紅
ゆうりこう

陶磁器の加飾技法の一つで、日本では辰砂(しんしゃ)ともいう。透明釉の釉裏、すなわち素地(きじ)面と釉(うわぐすり)との間に描かれた銅の顔料による下絵が、還元炎で紅色に呈色することから、中国で釉裏紅とよぶ。この加飾法は中国湖南省の長沙(ちょうさ)窯において晩唐9世紀に開発されたが、一時とだえ、元代の14世紀になって江南の景徳鎮(けいとくちん)窯が白磁胎釉裏紅技法をくふうして定着した。その初期の資料として、至治3年(1323)銘の木簡を伴う釉裏紅磁が、韓国新安沖に沈む元船から引き上げられている。景徳鎮窯は以後、釉裏紅を重要な技法の一つに加えて今日に至っている。朝鮮半島では高麗(こうらい)時代に青磁に併用され、李朝(りちょう)の18世紀にも盛行した。日本では江戸時代の17世紀に伊万里(いまり)焼がわずかながら試みているが、焼造量は少なく、遺品も希少である。

[矢部良明]

『『世界陶磁全集13 遼・金・元』(1981・小学館)』

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世界大百科事典(旧版)内の釉裏紅の言及

【陶磁器】より

…しかし14世紀のごく早い時期に,染付がつくられていたことは明らかである。コバルトを呈色材とした染付とともに,元代には銅を呈色材とした釉裏紅もつくり出され,あずき色の紅釉で絵付を行った磁器は独特のやきものである。中国国内ではこうした染付,釉裏紅は,日常の器皿とともに道教寺院の祭具としても用いられたが,インド,イラン,トルコなどのイスラム世界に貿易陶磁として大量に輸出され,イランのサファビー朝の故地であるアルダビールやオスマン・トルコのトプカプ宮殿に元染付の優品が多く将来され伝世している。…

※「釉裏紅」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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