重箱料理(読み)じゅうばこりょうり

日本大百科全書(ニッポニカ) 「重箱料理」の意味・わかりやすい解説

重箱料理
じゅうばこりょうり

重箱に詰めた料理のことで、「重詰め料理」「お重詰め」ともいう。元来、重箱は折箱から進化したもので、1797年(寛政9)刊の『好古日録(こうこにちろく)』には「重箱は慶長(けいちょう)年中重ねある食籠(じきろう)にもとづき初めて製造す。その用い方は折(おりうず)と同じ。折は檜(ひのき)の薄板を折り曲げて箱に作る。形は四角六角さまざまなり。今はこれを折という。足利(あしかが)家の頃(ころ)のものにも折と書きたれば、これも近世の称呼にあらず……」とある。

 重箱は、式正(しきしょう)料理など本格的な料理には初め用いなかったが、硯蓋(すずりぶた)などが食器として使用されるに及んで、重箱を用いる場合も出てきた。江戸時代の宝暦(ほうれき)(1751~64)ごろから上巳(じょうし)の節供が盛んになり、その料理を盛るのに重箱を用いている。さらに正月の祝い料理には、五重、四重、三重などに区分して用い、その風習はいまも続いている。

 重箱に詰めるものは、たとえば五段重では、一の重に祝い肴(ざかな)、二の重に口取り、三の重に焼き物、与(四)の重に煮しめ、五の重には酢の物を入れる。酢の物を焼き物と同じく三の重に詰めた場合は五の重は控えの重として、祝い肴やそのほかの重と同じ物を予備に詰めておく。四段重の場合は、焼き物を詰めた三の重に酢の物もいっしょに入れる。祝い肴としては黒豆、田作り、数の子などが、口取りにはきんとん、錦卵(にしきたまご)、紅白かまぼこ、伊達巻(だてまき)など、焼き物ではサワラ西京(さいきょう)焼き、ブリの照焼き、クルマエビの酒塩(さかしお)焼き、イカの松風焼きなど、酢の物では紅白なます、酢ばす、コハダの粟(あわ)漬け、サバの生(き)ずしなど、煮しめではクワイ蓮根(れんこん)、シイタケニンジン、キヌサヤエンドウなどが彩りよく用いられる。

河野友美多田鉄之助

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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