土中に金の鶏が埋まっていて、その鳴き声が聞こえるという伝説。長者の没落を語る朝日長者伝説と関連しているものが多い。岩手県西磐井(にしいわい)郡平泉町の金鶏山は高館(たかだち)の南西にあって、藤原秀衡(ひでひら)が高さ数十丈に築いて漆1万杯と黄金1万両に黄金の雌雄の鶏を埋めて、鎮護とした。「朝日さし夕日輝く木の下に漆万杯こがねおくおく」と謡われ伝えられている。岐阜県山県(やまがた)郡大桑(おおが)村(現山県市)の城山(しろやま)は、金鶏山とも称し、元旦(がんたん)には金鶏の鳴き声が三度聞こえるという。また、1588年(天正16)土岐(とき)氏が斎藤道三(どうさん)に攻め滅ぼされたときに代々の家宝の金鶏を井戸の底へ捨てて逃げたが、この鳴き声を聞いた者は長寿であるといわれる。奈良県添上(そえかみ)郡東山村(現山辺(やまべ)郡山添(やまぞえ)村)、針ヶ別所(はりがべっしょ)村(現奈良市都祁(つげ))、豊原村(現山添村)の3村の境は神野(こうの)山頂上で、黄金塚があって、元旦に吉凶を告げる金の鶏が土中から三声鳴く。ほかのときに鳴くと村に変事があるとされる。広島県三次(みよし)市の鶏淵(にわとりぶち)は、有徳人が立ち寄ると金鶏が現れる。宮城県栗原(くりはら)郡金田村(現栗原市)の鶏坂(にわとりざか)は、その昔に金売り吉次(きちじ)が黄金の鶏をつくって埋めたという。
このように、長者が財宝を埋めた跡から鶏の鳴き声がするという類型が多いが、ほかに、金鶏が飛び出して肩に止まった(宮城県登米(とめ)市)、黄金の鶏が落ちて死んだ鶏淵(山梨県北都留(きたつる)郡)などがある。霊鳥信仰に中世説話の長者譚(たん)モチーフなどが結び付いて生まれてきた伝説であろう。
[渡邊昭五]
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…鶏にまつわる俗信は多く,宵鳴きを凶兆と考えたり,鶏を使って溺死人を探索したりした。なお,地中から黄金の鶏の鳴声が聞こえるという金鶏伝説は全国的に分布している。【佐々木 清光】
[医術]
陰陽五行説によれば,白雄鶏(白いおんどり)は庚金(こうきん)太白の気があり,邪悪を避ける力があると信じられた。…
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出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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