仙人になるための薬。中国,晋の葛洪の《抱朴子》では,その〈金丹篇〉において,不老長生を得るには金丹を服用することが最も肝要であるとする。金丹の金は火で焼いても土に埋めても不朽である点が重んじられ,丹の最高のものは九転の丹で,焼けば焼くほど,霊妙に変化する点が重んじられた。そして,この大薬である金丹を作る際には,人里離れた名山で斎戒沐浴し身辺を清潔にしなければならぬとされ,種々の製作法が説かれる。また〈仙薬篇〉では,仙薬を3種に分類する。そのうち上薬は,生命を延ばし,天に昇って鬼神を使役する効能を持ち,中薬は人間の本性を養い,下薬は病を治す効果を持っているとする。仙薬の最上のものは丹砂で,その次が黄金,以下,白銀,諸芝,五玉,雲母などが上位を占める。これらの仙薬の採集方法としては,例えば諸芝(石芝,木芝,草芝,肉芝,菌芝の五芝)を採集する場合,特定の日に祭祀を行い,禹歩という特殊な歩き方で息をとめて近よって開山却害符というおふだをその上においてこれを獲得するといった呪術的な方法が説かれる。このように《抱朴子》においては,仙薬の効能を説くことはもちろんであるが,その仙薬の精錬の方法,採集の方法などにも呪術的な意味が強調されている点が注目される。続いて梁の陶弘景は《神農本草経集注》を著し,730種の薬物を玉石,草木,虫獣,菓,菜,米食に分類し,時用,産地,およびその薬物の効能によってどのような方術が行えるかを注記している。陶弘景の《本草集注》は,後の薬学(本草学)の基礎を築いたものとして知られており,《抱朴子》に比して,菊花,人参,甘草,朮(じゆつ),枸杞(くこ),茯苓(ぶくりよう)などの草木薬にも注意が払われ,医薬としての色彩が増している点が注目される。《本草集注》に見られる薬物と,後の宋代の《政和本草》とを比較しても,その薬物の種類がほとんど増加していないから,仙薬の種類は《本草集注》において,ほぼ固定したと見られる。
→丹 →練丹術
執筆者:砂山 稔
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報
…正倉院宝物の中には,中国産のもののほかにインドやペルシア産のものもある。宮廷医学として興味あることは,中国のそれにならって,長命のための仙薬の服用が流行していることである。この仙薬は,金,銀,水銀,ヒ素などの重金属を主成分とするもので,用量をすぎれば,かえって寿命を縮める結果になる。…
… 山を神聖視する観念は,とりわけ道教徒の間ではぐくまれた。《五岳真形図》と呼ばれる山岳図は彼らの間で重要視されたし,また練丹をはじめとする仙薬の製造は山中で行わねばならぬとされたのは,山神の加護を得るためであった。だがその一方,山神は恐ろしい存在でもあった。…
※「仙薬」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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