日本大百科全書(ニッポニカ) 「クリスタルガラス」の意味・わかりやすい解説
クリスタルガラス
くりすたるがらす
crystal glass
反射率、屈折率、透明度の高い工芸用のガラス。そのために酸化鉛を多量(ヨーロッパ規格では24重量%以上)に含有している。花器、高級食器などでは多く肉厚となるので不純物(とくに酸化鉄)による着色が目だたないように、原料の純度にはとくに注意を払う必要がある。またガラスの質が比較的軟らかいので、しばしばカット(切子(きりこ)細工)が施され、光の反射、屈折の美しさを強調するようにくふうされているため、カットガラスという呼び名と混同されている。一般のガラスの比重が約2.5であるのに対し、3あるいはそれ以上あって重く、たたくと多くは澄んだ金属性の音がする。組成の例をあげると、二酸化ケイ素SiO2 58.2、酸化カリウムK2O 12.0、酸化カルシウムCaO 4.1、酸化鉛PbO 25.7%。2000年代に入り、鉛の毒性による環境汚染の問題から、鉛を含まないクリスタルガラスがつくられるようになってきた。カリウムを多量に含むガラス、あるいは、それにジルコニア(酸化ジルコニウム)ZrO2や二酸化チタンTiO2などの高い屈折率をもつ酸化物を含むガラスがつくられている。
[境野照雄・伊藤節郎]