鐘巻(読み)かねまき

精選版 日本国語大辞典 「鐘巻」の意味・読み・例文・類語

かね‐まき【鐘巻】

  1. [ 1 ] 〘 名詞 〙 蟇目(ひきめ)の矢の沓巻(くつまき)のところを、上細く下太く、鐘状に巻いたもの(貞丈雑記(1784頃))。一説に、神頭(じんどう)の矢又は蟇目の刻目(きざみめ)を巻いたもの(射御拾遺抄(1422))。
    1. [初出の実例]「おもふあたりは大蛇すむかげ 人はこで憂入相のかねまきに〈守武〉」(出典:俳諧・誹諧独吟集(1666)上)
  2. [ 2 ] 謡曲。四番目物。廃曲。作者不詳。「道成寺(どうじょうじ)」の原曲。別名、鐘巻道成寺。

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改訂新版 世界大百科事典 「鐘巻」の意味・わかりやすい解説

鐘巻 (かねまき)

(1)能の曲名。四番目物。非現行演目。観世信光作。シテは白拍子,実は女の怨霊。現行演目《道成寺》の原作で,筋立ても主要部分の詞章もほぼ同じだが,次のような違いがある。道成寺の釣鐘再興の供養を拝みにきた白拍子が,女人禁制だと断られ,愁嘆する場面がある。許された白拍子が舞を舞う場面で,眼目乱拍子(らんびようし)に入る前に,道成寺創建の説話を物語るクセを舞う。鐘の中からふたたび現れた怨霊(後ジテ)を祈り伏せる僧(ワキ)の祈禱の文句が違う。怨霊が日高川に飛び込んで終わるのが現行の形だが,原作は〈日高の川波深淵に帰ると見えつるが,……執心は消えてぞ失せにける〉と終わる。
執筆者:(2)民俗芸能の曲名。中央の能で廃曲とされた(1)が黒川能に残るほか,岩手県の諸地方に伝存する山伏神楽(やまぶしかぐら)の曲中に《鐘(金)巻》がある。構想は能に同じであるが,詞章が違い,太刀にかぶせた黒羽織を鐘に見立てる演出があり,後段は山伏と鬼女が激しくわたりあう。なお中国地方の古い修験系の神楽にも同趣の曲があったらしく,広島県比婆郡東城町の1664年(寛文4)の荒神神楽能本には,《熊野ノ日高ノ金巻ノ子細》《金ノ供養》などの台本が残る。
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世界大百科事典(旧版)内の鐘巻の言及

【道成寺】より

四番目物。原作である《鐘巻(かねまき)》は観世信光作。シテはまなごの長者の娘の怨霊(おんりよう)。…

【番楽】より

…基本的芸態や曲目は東北地方の山伏系の神楽とほぼ同じで,楽器は大型の締太鼓,笛,銅拍子(手平鉦(てびらがね)ともいう),ほかに付け打ちする拍子板,小太鼓などを使う所もある。曲目も前述の武士舞のほか《露払い》《三番叟》などの少年の舞や,《杵舞》《傘舞》などの曲舞(くせまい),《蕨折(わらびおり)》《鐘巻(かねまき)》などの女舞の曲を残す所もある。山形県飽海(あくみ)郡遊佐町杉沢の〈ひやま〉が国指定重要無形民俗文化財とされるほか,秋田県では北秋田郡阿仁町の〈根子(ねつこ)番楽〉,由利郡矢島町の〈坂ノ下番楽〉,象潟町の〈横岡番楽〉,平鹿郡十文字町の〈仁井田番楽〉など9ヵ所の番楽が,山形県では最上郡金山町有屋の〈稲沢番楽〉などが県指定民俗文化財とされる。…

※「鐘巻」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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