閻浮提(読み)エンブダイ

デジタル大辞泉 「閻浮提」の意味・読み・例文・類語

えんぶ‐だい【×閻浮提】

《〈梵〉Jambu-dvīpaの音写仏教世界観で、人間世界のこと。この世。現世。世界の中心である須弥山しゅみせん四方にある大陸うち南方にあり、閻浮樹が生えているとされ、もとインドをさした。閻浮洲えんぶしゅう南閻浮提南贍部洲なんせんぶしゅう

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精選版 日本国語大辞典 「閻浮提」の意味・読み・例文・類語

えんぶ‐だい【閻浮提】

  1. ( [梵語] Jambudvīpa 閻浮樹という大樹の生えている大陸 ) 仏語須彌(しゅみ)四州一つ須彌山(しゅみせん)の南方海上にある大陸。南瞻部洲(なんせんぶしゅう)ともいい、もとインドの地を想定したもので、のちに人間世界、現世を意味するようになった。南閻浮提。閻浮。閻浮洲。
    1. [初出の実例]「閻浮提の人、貧きに依て苦しび多し」(出典:観智院本三宝絵(984)上)
    2. [その他の文献]〔法華経‐普賢菩薩勧発品〕

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「閻浮提」の意味・わかりやすい解説

閻浮提
えんぶだい

サンスクリット語のジャンブ・ドゥビーパJambu-dvīpaに相当する俗語形からの音写語で、ほかに剡浮洲(えんぶしゅう)、贍部洲(せんぶしゅう)とも音訳される。ジャンブ樹jambuすなわちフトモモの木rose-apple treeの繁茂する島(ドゥビーパdvīpa)の意で、インドのことをいい、ひいては人間界のことをさす。仏教の世界観を組織的に叙述する『倶舎論(くしゃろん)』世間品(せけんぼん)によれば、外海中に須弥山(しゅみせん)をぐるりと囲んで四大洲があり、須弥山に向かって東には半月形の毘提訶洲(びだいかしゅう)(ビデーハ・ドゥビーパvideha-dvīpa)、南に贍部洲(それで閻浮提を単に南洲ともいう)、西に満月形の牛貨洲(ごかしゅう)(ゴーダーニーヤ・ドゥビーパgodānīya-dvīpa)、北に方座形の倶盧洲(くるしゅう)(クル・ドゥビーパkuru-dvīpa)があるといわれる。閻浮提は、3辺がおのおの2000由旬(ゆじゅん)(ヨージャナ。1ヨージャナは約7キロメートル)、残りの1辺がわずかに3.5由旬で、車のような形をしており、要するにインド亜大陸のことを示している。なおこの中央には、金剛座が屹立(きつりつ)し、そこで菩薩(ぼさつ)たちが金剛喩定(ゆじょう)(すべての煩悩(ぼんのう)を断ち切る堅固な心)を修習すると説かれている。

[高橋 壯]

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改訂新版 世界大百科事典 「閻浮提」の意味・わかりやすい解説

閻浮提 (えんぶだい)

仏教宇宙観にあらわれる洲(大陸)の名称。贍部洲(せんぶしゆう)ともいう。サンスクリットjambudvīpa。閻浮,贍部はjambuの音訳語で,提と洲はdvīpaのそれぞれ音訳語および意訳語である。世界の中心〈須弥山〉の南方,大海中に位置する。閻浮の名はここに生えるジャンブ樹(jambu,学名Eugenia jambolana)に由来し,南方にあるので〈南贍部洲〉とも呼ばれる。形はほぼ三角形に近い台形で,底辺を北にして横たわる。底辺の長さは2000由旬(1由旬=約7km),洲上には雪山(ヒマラヤ)やガンガー(ガンジス)川,インダス川などがあり,この洲はインド亜大陸の姿を反映していることがわかる。仏典では人間世界の全体を意味する言葉として使われている。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「閻浮提」の意味・わかりやすい解説

閻浮提
えんぶだい

サンスクリット語 Jambu-dvīpaの音写,えん浮洲,閻浮提へい波,贍部洲などともいわれ,穢洲,勝金洲などの漢訳もある。古代インドの宇宙説において世界の中心とされている須弥山 (しゅみせん) の南方に位する大陸で,四大洲の一つ。北に広く南に狭い地形で縦横 7000由旬 (ゆじゅん) あるといわれる。インドの地形に基づいて考えられたが,のちにはこの人間界全体をさすようになった。閻浮提には,大国 16,中国 500,小国 10万が存在するといわれ,仏縁に恵まれていることにおいては,この洲が第一であるとされる。

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