悪魔を退治し降伏(ごうぶく)すること。悪魔の誘惑を克服すること。仏伝によれば、釈尊(しゃくそん)(釈迦(しゃか))が悟りを完成させんがために菩提樹(ぼだいじゅ)の下で禅定(ぜんじょう)に入っていたとき、いろいろな悪魔が甘言をもって誘惑したり、暴威をもって脅迫したが、釈尊はそれらの妨害をすべて退けた。これを「降魔」という。実際は、釈尊が心の中の煩悩(ぼんのう)に打ち勝ったことを表現したものである。仏の一生涯で重要な八つの事件、すなわち八相(はっそう)(降兜率(ごうとそつ)、託胎(たくたい)、降生(ごうしょう)、出家(しゅっけ)、降魔、成道(じょうどう)、説法、涅槃(ねはん))の一つ。
[阿部慈園]
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