六訂版 家庭医学大全科 「陰嚢水腫、精索水腫」の解説
陰嚢水腫、精索水腫
いんのうすいしゅ、せいさくすいしゅ
Hydrocele testis, Hydrocele of spermatic cord
(男性生殖器の病気)
どんな病気か
精巣、精巣の血管および精管をおおっている
原因は何か
停留精巣(ていりゅうせいそう)の項でも述べますが、精巣が陰嚢に下降してくる過程で腹膜の一部が精巣にくっついてきます。正常の状態では腹膜は本来突起状になって閉じていますが、これが閉じずに開いて腸が出入りするのが
このように小児の陰嚢水腫、精索水腫の場合は鞘膜の一部が腹膜と交通している(つながっている)ことが多く、交通性陰嚢水腫、精索水腫といいます(図6)。
症状と診断
通常は陰嚢水腫では陰嚢に、精索水腫では陰嚢上部か鼠径部に痛みを伴わない
交通性陰嚢水腫の場合は、大きさが時間帯や日によって大きく異なるのが特徴です。朝よりも、立位で腹圧が長時間かかった午後のほうが大きくなります。外鼠径ヘルニアの場合はやや硬く、ペンライトを当てても透けては見えません。水腫かヘルニアかを区別するには超音波検査が有効です。
陰嚢あるいは鼠径部がはれて、おなかを痛がる時は
治療の方法
大人の場合は、なかの液体を注射器で吸引することもありますが、効果は一時的で、またたまってきます。根本的に治すには、手術で水のたまった袋(鞘膜)を切除する必要があります。大人の場合、通常は
小児では、2~3歳までは自然治癒の可能性が高いので経過観察します。内容液の吸引は疼痛を伴い、根本的な解決にはならないのですすめられません。3~4歳以降では、大きくなって本人が気にしたり歩きづらい場合には手術を行います。手術は全身麻酔下で、大人と同様に袋(鞘膜)を切除しますが、交通性のことが多いので陰嚢ではなく鼠径部で切開して、袋も閉鎖し、鼠径ヘルニアを予防します。
武田 光正
出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報