陰核(読み)インカク(その他表記)clitoris

翻訳|clitoris

精選版 日本国語大辞典 「陰核」の意味・読み・例文・類語

へ‐の‐こ【陰核】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 睾丸(こうがん)きんたま。へのこだま。〔十巻本和名抄(934頃)〕
  3. 陰嚢(いんのう)
    1. [初出の実例]「竊に自ら勢(ヘノコ)を割き」(出典:大唐西域記長寛元年点(1163)一)
  4. 陰茎。
    1. [初出の実例]「謂閇(ヘノコ)大而如虹梁」(出典:新猿楽記(1061‐65頃))

いん‐かく【陰核】

  1. 〘 名詞 〙 女性の生殖器にある海綿体の小突起。生物学的には男性の陰茎に相当する。陰梃(いんてい)。ひなさき。クリトリス。さね。〔医語類聚(1872)〕

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

改訂新版 世界大百科事典 「陰核」の意味・わかりやすい解説

陰核 (いんかく)
clitoris

クリトリスともいう。女性外陰部の一部で,左右の小陰唇が頭側で相会するところにあり,男性の陰茎に相当する。表面はうすい重層扁平上皮におおわれ,その下に粘膜固有層がある。上皮には毛や脂腺がない。陰核の先端を陰核亀頭と呼ぶ。陰核の内部には陰茎海綿体に相当する陰核海綿体を入れる。陰茎海綿体に比べるとはるかに小さいが,それと同じように不規則な形の海綿状の空洞の網と,洞壁に分散する平滑筋束からなり,充血すると膨大し硬くなる。海綿体の近くには多数の神経繊維束やファーター=パチニ層板小体がみられ,粘膜固有層内では陰部神経小体が形成されるなど,神経末端に富み,きわめて敏感である。
性器
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「陰核」の意味・わかりやすい解説

陰核
いんかく

女性外陰部(外生殖器)の細い割れ目、すなわち陰裂の前縁を囲む位置にあり、男性の陰茎に相当する。左右の恥骨下枝にそれぞれ付着する、長さ3~4センチメートルの小円柱状の陰核脚(陰核海綿体)が前方で合して逆V字形をつくる。先端部は陰核体で、その先端は小隆起の陰核亀頭(きとう)となり、この部分の外面は陰核包皮に覆われているが、知覚性神経終末が多く分布している。陰核包皮には粘液腺(せん)、脂腺もある。陰核は性的興奮によって海綿体組織の充血を生じ、勃起(ぼっき)する。

[嶋井和世]


出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

百科事典マイペディア 「陰核」の意味・わかりやすい解説

陰核【いんかく】

クリトリス。女性の外生殖器の一部で(ちつ)前庭の前端中央部にある小突起。発生学的には男性の陰茎に相当する勃起(ぼっき)体である。構造も陰茎に類似し,陰核海綿体よりなり,包皮に包まれた陰核亀頭がある。ただし陰茎よりはるかに小さく,内部に尿道をもたない。→生殖器官
→関連項目外陰部海綿体性交

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

世界大百科事典(旧版)内の陰核の言及

【性器】より

…また,性器のうち外部から認められるものを外性器(外陰部),体内に保護されて外部から見えないものを内性器という。外性器には,男性では陰茎,陰囊があり,女性では大陰唇,小陰唇,陰核,腟前庭などが属し,主として性交に関与する。内性器には,男性では睾丸,副睾丸,精管,精囊,前立腺などが属し,女性では卵巣,卵管,子宮などが属し,配偶子(精子あるいは卵子)の生産と輸送,とくに女性では妊娠,出産に関与している。…

※「陰核」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

仕事納

〘 名詞 〙 年の暮れに、その年の仕事を終えること。また、その日。《 季語・冬 》[初出の実例]「けふは大晦日(つごもり)一年中の仕事納(オサ)め」(出典:浄瑠璃・新版歌祭文(お染久松)(1780)油...

仕事納の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android