下総(しもうさ)国古河(こが)(現、茨城県)の11代藩主土井利位(としつら)が、20年余にわたって雪の結晶を観察し、顕微鏡による結晶図として出版されたもの。正編(1832年12月刊)には86個の結晶図とともに、利位によって「雪の生成の物理」と「雪の功用」が述べられている。注目すべきは、家老で蘭学(らんがく)者の鷹見(たかみ)泉石がその後書きのなかで、マルチネットJ. F. Martinet(1729―1795)の自然学教科書から雪の結晶図12種を引用していることで、本書の成立に蘭学が大きく影響したことを示唆している。続編(1840年9月刊)には、大坂城代、京都所司代として任地で観察したものを含め、97個の結晶図を収めている。これを著したことは日本における西欧科学の黎明(れいめい)期にあって特筆さるべき業績であった。
[小林禎作・前野紀一]
『小林禎作著『雪華図説新考』(『雪華図説 正続』所収・復刻版・1982・築地書館)』
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…1825年に刊行された青地林宗の《気海観瀾(きかいかんらん)》は,物理学・化学をおもに扱った本であるが,気象に関することもかなり含まれている。古河藩の城主土井利位(としつら)は顕微鏡で雪の結晶を観察し,そのスケッチを《雪華図説》として1833年に出版している。また,越後の商人鈴木牧之は1835‐42年に《北越雪譜》を出したが,これは雪に関連した各種の話題を収めたものである。…
…はじめは水野忠邦を助けて天保改革をすすめたが,のちに上知令(あげちれい)に反対して忠邦の失脚後は代わって老中首座となり,44年(弘化1)まで在職した。家老の鷹見泉石の影響で蘭学に親しみ,顕微鏡で雪の結晶を観察して《雪華図説》を著した。【大口 勇次郎】。…
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出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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