日本大百科全書(ニッポニカ) 「電子情報サービス」の意味・わかりやすい解説
電子情報サービス
でんしじょうほうさーびす
電子メディアによる各種の情報サービス。1980年代、ニューメディア時代の到来が喧伝(けんでん)されたが、その背景には、ビデオテックス(日本では「キャプテン・システム」)、テレテキスト(テレビによる文字多重放送)、データ通信サービスやパソコン通信サービスによる情報サービス(専用回線と専用端末利用)、CATV(ケーブルテレビ。一般放送の再送信とは異なる、独自の番組の有料放送)などが相次いでニューメディアとして出現した経緯が存在する。それらはいずれも、マイクロエレクトロニクス、コンピュータ、高度電気通信技術を一体化させた共通の特徴を備えており、伝統的なマス・メディアや通信メディアにはできなかった新しい電子情報サービスを創始する意義を担った。また、電話ファクシミリの普及に伴い、マス・メディアだけでなく、一般企業によるマーケティング・サービス、顧客情報システムに自動応答型のファクシミリ情報サービスが活用されることになった。そのなかでも、新聞・雑誌の切り抜き記事を、指定情報分類や指定キーワードに応じて、毎日自動的にファックスで送ってくれるEL(エレクトロニック・ライブラリー。電通が1991年から事業化)の活動が、本格的なファクシミリ情報サービスとして注目された。
だが、1994年(平成6)にインターネットの商用化が始まり、翌95年、あらゆる国、地域、業種におけるホームページの使用が爆発的に広がって、情報サービスにもそれが利用されるようになるのに伴い、電子情報サービスの技術システムの根幹や普及の局面は一変した。すなわち、汎用(はんよう)の高性能・小型パソコンの普及は、めんどうだった端末規格決定の問題を解消し、一般加入電話の利用は、むずかしかった通信手続採用の問題を無用と化したからである。それはデジタル化の進展の結果だが、デジタル統合のさらなる高度化や範囲の拡大は、放送(地上波、衛星放送、CATV)、電話(携帯電話のiモードなど)はもちろん、新聞や出版、広告の世界までをも包み込むようになっている。その勢いは、ビデオテックスなどのニューメディアを簡単に陳腐化し、ファクシミリ情報サービスなどにも、とってかわろうとしている。やがてはありとあらゆる情報が、デジタル信号となって共同の搬送路(ブロードバンド・システムと称される高速広帯域のインフラストラクチャー=通信基盤)を流れ、同一のホームサーバーとこれに接続する任意の端末に届けられるようになるはずである。新聞・出版・放送は単なる情報の一つとしてそのなかに埋没してしまうのか、あるいは固有の存在理由と活動領域を維持し、形態的にもほかの情報サービスとは明確に異なる特徴を備えた媒体として存在し続けるのか、その行方が注目される。
[桂 敬一]