電子の波動関数の確率的な解釈を,雲のような広がりをもつ具体像として考えたもの.波動方程式によれば,運動する電子は素体積dτ中で見いだされる確率がψ2dτである波動関数ψで表される.任意の点における雲の密度が ψ2 に比例するような電子雲が考えられる.ψ2 が大きいところでは電子雲は密である.これは正しくは,任意の領域内で電子を見いだす確率,というべきところを実在する電子の密度といいかえた点で本来の意味とは本質的に異なる.それゆえ,厳密には電子雲という考え方は正しいとはいえない.しかし,モデル的な議論をするときには非常に有効であって,広く利用されている.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…しかし,実際は電子は質点ではなく,波の性質をもつことが結晶による電子線の回折現象によって明らかになり,したがって,原子内の電子の状態を記述するにはニュートン力学では不十分で,量子力学が必要になる。量子力学によると,原子内では電子は電子雲の状態で存在する。すなわち,一つ一つの電子がそれぞれ雲のように広がっている。…
…原子内では,個々の電子の雲(電子雲electron cloud)が重なりあって存在するとして,よく個々の電子の雲の状態は複素関数で表される。この複素関数は古典力学(ニュートン力学)における電子の円軌道,楕円軌道に相等するものなので,原子軌道関数と呼ばれ,略して原子軌道ともいう。…
… さて原子には,原子核のまわりに1s,2s,2p,3s,3p,3d,4s,4p,4d,4f,5s,5p,……のような記号で表される多数の電子軌道があり,その上に電子が配列されている。これらの記号中で1,2,3,……の部分は電子軌道の〈主量子数〉,すなわち原子核に近い軌道から遠い軌道へと数えたときの順序を示す数であり,s,p,d,……はそれら電子雲の形,すなわちsは球形,p,dはそれぞれ図2に示すような形の電子雲をつくる軌道であることを示す(詳細については〈原子〉および〈原子軌道関数〉の項参照)。それぞれの主量子数について,s軌道はつねに1種類しかないが,p軌道には図のように3種類,またd軌道には5種類のものが存在し,さらに複雑な形の電子雲をつくるf軌道には7種類のものが存在する。…
※「電子雲」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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