大地における人工または自然の電気現象を観測し,その結果を解析することによって地下の地質構造(または目標物)を推定する方法。大地を構成する岩石の電気的な性質が,岩石の種類と状態によって大幅に異なることを利用する。電気探査は,原理から分類して,大地に直流電流を流すことによるもの(比抵抗法,狭義の電気探査),電磁誘導によるもの(電磁法),および電気化学的な分極によるものからなる。前2者は,大地の比抵抗(電気伝導度の逆数)の分布を調べるものである。岩石を構成する鉱物は,良導体である金属鉱物など特殊なものを除けば絶縁体と考えられ,電気を伝えない。しかし,岩石は多少ともすきま(孔隙)をもっているので,そこに水が満ちている場合には,水を伝わって岩石中に電気が流れる。したがって,岩石が水を多く含むほど,また水の伝導度が高いほど,大地は電気を伝えやすい。変成岩や深成岩は,一般に孔隙率が小さく比抵抗が高い。新しい時代の堆積岩は孔隙率が大きく比抵抗が低い。とりわけ,海成の堆積岩は食塩分が強く比抵抗が低い。また,岩石の風化・変質作用で孔隙が増え,比抵抗が低くなることもある。
電気探査の利用は,地下水探査,温泉探査および土木分野に関する調査(治山・地すべり等)で比抵抗法が多く,地熱探査で比抵抗法と電磁法,金属鉱床探査で分極による方法と電磁法が多く使われる。
ふつう大地に設置した四つの電極を用いる。1対の電極(電流極AB)から大地に直流電流を流し,その結果として形成される電場を他の1対の電極(電位極MN)で観測する(図1)。電極配置には多くの種類があるが,1本の測線上に展開するシュランベルジャー法とウェンナー法が最も普及している。ともに,流した電流Iと観測された電位差Vおよび電極間の距離から見掛比抵抗ρaを計算する。
シュランベルジャー法は,電流極AとBのちょうど中点における電位傾度を計測したものとして,解析理論が組まれており,比抵抗を求めることができる最大深度(探査深度)はAB/2によって決まる。ウェンナー法は,電極間隔がすべて等しくaであるところに特徴があり,電位極MNの間の電位差にもとづいて解析理論が組まれている。探査深度はaに規定される。電極間隔が小さいとき,形成される電場に下層の影響は現れないが,電極間隔が大きくなると,むしろ下層の影響が強くなる。水平3層構造のときのシュランベルジャー法の見掛比抵抗曲線(電極間隔と見掛比抵抗(ともに対数)の関係)を図2に示す。このモデルでは,第2層の比抵抗を第1層のそれに対していろいろ変えて曲線のパラメーターとしている。第3層は絶縁層(比抵抗が無限大)である。第1層と第2層の厚さは等しいとしている。見掛比抵抗は均質大地では真の比抵抗に一致するように定義されている。電極間隔AB/2が十分に小さいとき,見掛比抵抗 ρaは第1層の比抵抗 ρ1に漸近する。電極間隔を順次拡大して,AB/2が第1層の厚さm1を越えると第2層の影響が明らかになる。第3層の影響が現れる電極間隔は,このモデルの場合は,第2層の比抵抗 ρ2が小さいほど大きく,第3層までの深さm2の2~3倍にまでなる。勾配45度の線は絶縁層を表している。比抵抗法の利用は,小規模な調査では電極間隔が等しく作業性のよいウェンナー法が,大規模な調査では深部探査に向くシュランベルジャー法が多い。地下水探査では帯水層の下にある粘土層(低比抵抗層)の検出を目的とすることが多い。温泉探査や土木探査では,変質や風化による低比抵抗層の検出を目標としている。
電磁法は大陸地域の金属鉱床探査のために発達した。大陸の楯状地では,鉱床の母岩となる岩石類が高い比抵抗を示すのに対し,金属鉱床の電気伝導度が高く,非常に差が大きい。このため交流磁場の励起によく感応して強い磁場の異常を発生する。交流磁場はループに交流を流して発生できることから,電極を接地しなくてもよい。電磁法による調査の主要な部分は空中から行われている。鉱床の形,傾きなどはさまざまであるから,センサーとの位置関係で検出しにくいものもある。しかし,航空機搭載の利点を生かした多成分同時測定で検出能力を高めた高級なシステムが使われるようになった。電磁法の新しい分野に垂直探査がある。変動電磁場は周波数が低いほど地下深部まで透入する(表皮効果)。周波数を変えて大地の電磁応答を観測すれば深度方向の比抵抗の変化が解析できる。信号源となる電磁場には,自然のものを利用する方法(地磁気地電流法)と人工的に大地やループに交流の電流を流して発生させる方法とがある。今後の発展が期待される分野である。
いろいろな電気化学的な分極現象が探査に応用されている。金属鉱物の粒が散在するところに直流電流を流すと,粒の表面に電気二重層が形成される。その後に電流を切ると電気二重層が解消される。この過程を地表の電位差の変化として検出し,金属鉱床の探査に役立てることができる(誘導分極法,IP法)。電気二重層は,大地の電気伝導が地層水中のイオン伝導であるのに対し,金属鉱物内は電子伝導であるため,通電により境界面にイオンがたまって形成される。自然電位(SP)を用いる自然電位法(SP法)では,自然の状態で地表で観測される電位分布を解析して地下を推定する。大地の孔隙中を水が流れるとき,固体-液体の境界面における電位差(ゼータ電位)に空間的偏位が生じ,流動電位が観測される。温泉水や地下水の流動解析に用い,塊状の金属鉱床では,地下水面より上の酸化帯と下の還元帯の間に分極電位が現れ(鉱体電池),探鉱に利用する。
執筆者:花岡 尚之
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…しかしながら,この推定を確かめたり,さらに深いところの状態を推定するためには,他の方法を用いなければならない。(1)物理探査 いろいろな地球物理学的手法を用いて行う調査方法であり,主として利用する物理量の違いによって方法が異なり,それぞれ,地震探査,重力探査,磁気探査,電気探査,放射能探査,地温探査,物理検層などと呼ばれている。(a)地震探査 地下の岩石や地層の中を波動として伝搬する弾性波の速度を測定することによって,地下構造を明らかにする調査で,古くから,自然発生地震によって地球の内部構造,とりわけ地殻やマントル上部の構造を明らかにするために用いられてきた方法である。…
※「電気探査」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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