家庭医学館 「電磁波による健康障害」の解説
でんじはによるけんこうしょうがい【電磁波による健康障害】
電磁波が1秒間に振動する回数(波長)を周波数といい、ヘルツという単位で表わします。電磁波は、波長によって分類されています(表「電磁波の種類」)。
■紫外線(しがいせん)による健康障害
●目の障害
角膜(かくまく)や結膜(けつまく)に吸収され、角結膜炎がおこります。スキーヤーなどにおこる雪眼炎(せつがんえん)や溶接作業でおこる電気性眼炎(でんきせいがんえん)(「電気性眼炎(雪目/雪眼炎)」)がその代表です。
紫外線をカットするサングラスをかけると予防できます。
●皮膚の障害
いわゆる日焼けの原因となり、皮膚の老化を促進します。水疱(すいほう)や紅斑(こうはん)ができ、色素沈着が残ることもあります。
また、皮膚がんを発生させます。皮膚がんは、日射しの強い緯度の低い地域に多くみられますし、成層圏(せいそうけん)のオゾン層の破壊が進んで、生物には非常に有害な生物活性紫外線(UV‐B波)がオゾンで吸収されなくなり、B波が増えてきている近年、白人にメラノーマ(「メラノーマ(悪性黒色腫)」)という皮膚がんが増加しているといわれています。
予防は、日射しの強い場所では、皮膚を露出させないことです。露出させる部位に、紫外線をカットするクリームを塗るのも効果があります。
■赤外線(せきがいせん)による健康障害
赤外線は熱線(ねっせん)ともいい、温度をもつすべての物体から放射されていて、からだを暖める作用があります。
●皮膚の障害
800nm(ナノメートル)(1nmは100万分の1mm)くらいまでの短い波長の赤外線は透過力が強く、皮下組織まで達して、やけどをすることがあります。
予防は、皮膚の露出部を少なくすることです。
赤外線を浴びる職場では、保護衣を着用しましょう。
●目の障害
長期間、さらされていると、白内障(はくないしょう)(赤外線白内障(せきがいせんはくないしょう)、熱線白内障(ねっせんはくないしょう))がおこります。
ガラス工業(ガラス工白内障(こうはくないしょう))、製鉄作業などに携わる人におこりやすいものです。
腰痛などの治療に用いられる家庭用の遠赤外線照射器の光線を見続けていてもおこります。
赤外線をカットする保護めがねの着用で、予防できます。
■マイクロ波(マイクロウェーブ)による健康障害
目の水晶体(すいしょうたい)は、もっとも敏感な器官なので、マイクロ波を浴びると白内障(マイクロ波白内障)がおこります。また、睾丸(こうがん)は熱に弱いので、照射を受けると一時的な無精子症(むせいししょう)になります。
ただし、現在までに、重度の障害や死亡例の報告はありません。
■レーザー光線(こうせん)による健康障害
レーザー(LASER)は、Light Amplification by Stimulated Emission of Radiation (放射能の放出で刺激された拡大光)の略です。
人工的につくられた電磁波で、通信、測定、焼灼(しょうしゃく)、外科手術、眼科手術などに利用されています。
照射されると、皮膚ではやけどがおこります。目では網膜(もうまく)のやけどや失明(しつめい)がおこりますが、十分な防護処置が施されているので、事故や操作ミス以外で障害がおこることはありません。
■電離放射線(でんりほうしゃせん)による健康障害
物質をイオン化させる作用(電離作用)をもつ放射線を電離放射線といい、電磁放射線(X線、γ(ガンマ)線)と粒子(りゅうし)放射線(α(アルファ)線、重粒子線、陽子線(ようしせん)、β(ベータ)線、電子線、中性子線(ちゅうせいしせん)など)とがあります。
いずれも医療に利用されるほか、原子力発電所でも発生しています。
さまざまな障害(脱毛、白内障、皮膚炎、悪性腫瘍(あくせいしゅよう)、遺伝的影響など)をもたらします。
ただし、厳重に管理されているので、事故や操作ミス以外で障害がおこることはありません。