項目分析(読み)こうもくぶんせき(英語表記)item analysis

最新 心理学事典 「項目分析」の解説

こうもくぶんせき
項目分析
item analysis

項目分析とは,項目ごとに求めた困難度と識別力を表わす指標に基づき,その項目の取捨選択,または改訂を行なうことを意味する。具体的には,多肢選択式のテストを開発したり作成したりする際に,そのテストを構成する項目の特徴を統計的な側面から検討するための一連の手続きのことである。テストを構成する最も基本的な要素である項目がうまく機能しているかどうかは,テストの品質そのものの良否にかかわる本質的な問題である。さらには,項目作成者に結果をフィードバックすることでより良いテストの作成が期待できるという意味でも,項目分析がもたらす情報は重要である。

 項目分析の具体的な手続きにはいくつもの種類があるが,基本的にはテストが仮定する心理学的特性を表現するための尺度の一次元性を導くことを目的としている。言い換えれば,テストの内的一貫性ないし内的整合性を高めることをめざす。したがって,一次元性が確保できない場合や仮定された心理学的特性が一つでない場合には,項目分析によって得られる情報は有効ではない。その場合は,項目をいくつかの下位尺度ごとに項目分析を進めるべきである。

 項目の困難度には,通常その項目を受けた受験者集団のうち何名が正答したかを示す項目正答率(通過率)が使われることが多い。分散=0.5の場合に最大となるため,の値は0.2から0.8くらいの範囲に入っているのが望ましいとされる。ただし受験者のテスト不安などを防止する目的で,正答率が0.9以上の非常にやさしい項目をテストの冒頭におくなどの配慮が必要な場合は,この限りではない。

 次に項目識別力としては,当該項目とテスト得点との相関係数(点双列相関係数point biserial correlation coefficient)が使われることが多い。その際,テスト得点の計算には当該項目を含める場合と含めない場合とがあるが,前者後者に比べて高い相関が得られる。経験的には,後者の場合において0.2程度以上あることが望ましいといえる。

 さらに項目が個の選択肢をもつ場合には,選択肢ごとに詳細な分析を行なうために,テスト得点に応じて受験者集団を個の下位集団に分割し,その集団ごとに各選択肢の選択率を考察する。これはk×m分割表を考察することと等しい。人数が少ない場合には,得点が上位の群と下位の群の半分ずつに分割し,多い場合には最上位の得点から約27%,最下位の得点から約27%を取って,上位群をG群,下位群をP群として分析を行なうことからG-P分析good-poor analysisとよばれることもある。しかしより一般的には,テスト得点の高い者順にたとえば四つか五つのグループに分け,中位の群についての情報も含めて検討される。これは上位の群ほど正答の選択肢を選んだ人数が多くなり,中位の群や下位の群の選択率を合わせて見ることにより,その項目がどのあたりで仮定された心理学的特性をよりよく識別できているかを検討できるからである。なお,選択肢ごとに上位群と下位群の正答率をそれぞれLUとしたとき,その差U-PLを弁別指数discrimination indexとよび,項目としてテストに組み込むためには少なくとも0.2程度以上が必要とされる。

 多肢選択形式のテストの場合,誤答となる選択肢を迷わしdistracterとよぶ。迷わしの選択率はいずれの選択を取ってもほぼ均等で,かつ上位群になるほど低くなっていくのが望ましい。しかし,下位群よりも上位群の方の選択率が高い迷わしがある場合には,検討が必要である。
〔柴山 直〕

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「項目分析」の意味・わかりやすい解説

項目分析
こうもくぶんせき
item analysis

一群の質問項目のなかから、測定しようとしている態度を適切に表していると考えられる質問項目だけを取り出すために用いられる態度測定法の一つ。1932年アメリカの社会心理学者リッカートRensis Likert(1903―1981)によって提案された。項目分析は、一般にグッド・プア・アナリシスgood-poor analysisという方法で行われ、次のような手続で進められる。(1)測ろうとしている態度を引き出すような質問を考え、各質問には、「きわめて賛成」「賛成」「どちらともいえない」「反対」「きわめて反対」といった二分法から七分法程度の反応形式の回答カテゴリーを決定する。(2)各カテゴリーに、5、4、3、2、1といった等間隔の仮得点を与え、全質問項目の合計得点を算出した後、合計得点の高い者から順に25%、低い者から順に25%を抜き出し、それぞれ上位グループ、下位グループとする。(3)各質問項目について、回答の分布に上位グループと下位グループとの間で有意差があれば、その質問項目は弁別力のあるものとして認められる。なお、項目ごとに他のすべての項目との間の相関係数を計算し、その平均の低いものを捨てるという方法が用いられることもある。

 項目分析によって有意差の認められた項目が、態度を測定する最終尺度(リッカート尺度)を構成し、その合計得点が個人の測定値となる。なお、各カテゴリーの得点は、回答の分布を顧慮したウェイトづけがなされるが、先の仮得点がそのまま用いられることも多い。素朴ではあるが簡便な方法として、今日でもよく用いられる尺度構成法である。

[原 純輔]

『原純輔・海野道郎著『社会調査演習』第2版(2004・東京大学出版会)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「項目分析」の意味・わかりやすい解説

項目分析
こうもくぶんせき
item analysis

アイテムアナリシスともいう。テストや質問票を作成する際に,あらかじめ多数の質問項目を用意し,適当な被験者集団で予備調査を行い,項目の困難度,弁別力,内的一貫性,信頼度などを統計的に検討する方法。回答が「はい」と「いいえ」の2通りだけとか,項目の得点が1か0のいずれかでしかないような場合には,総合得点との点双列相関係数などを求め,相関が高ければその項目は測定全体の目的に高く寄与しているとみなして採用し,相関が0に近ければむだな項目として除去または改作する。選択肢が多数あるときは,被験者を総合得点の上位群と下位群に分け,回答の分布を比較して項目のよしあしを検討する (good-poor test) 。項目相互の間の連関や外的基準との連関を手掛りとして分析する場合もある。

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