最新 心理学事典 「項目分析」の解説
こうもくぶんせき
項目分析
item analysis
項目分析の具体的な手続きにはいくつもの種類があるが,基本的にはテストが仮定する心理学的特性を表現するための尺度の一次元性を導くことを目的としている。言い換えれば,テストの内的一貫性ないし内的整合性を高めることをめざす。したがって,一次元性が確保できない場合や仮定された心理学的特性が一つでない場合には,項目分析によって得られる情報は有効ではない。その場合は,項目をいくつかの下位尺度ごとに項目分析を進めるべきである。
項目の困難度には,通常その項目を受けた受験者集団のうち何名が正答したかを示す項目正答率(通過率)pが使われることが多い。pの分散はp=0.5の場合に最大となるため,pの値は0.2から0.8くらいの範囲に入っているのが望ましいとされる。ただし受験者のテスト不安などを防止する目的で,正答率が0.9以上の非常にやさしい項目をテストの冒頭におくなどの配慮が必要な場合は,この限りではない。
次に項目識別力としては,当該項目とテスト得点との相関係数(点双列相関係数point biserial correlation coefficient)が使われることが多い。その際,テスト得点の計算には当該項目を含める場合と含めない場合とがあるが,前者は後者に比べて高い相関が得られる。経験的には,後者の場合において0.2程度以上あることが望ましいといえる。
さらに項目がk個の選択肢をもつ場合には,選択肢ごとに詳細な分析を行なうために,テスト得点に応じて受験者集団をm個の下位集団に分割し,その集団ごとに各選択肢の選択率を考察する。これはk×m分割表を考察することと等しい。人数が少ない場合には,得点が上位の群と下位の群の半分ずつに分割し,多い場合には最上位の得点から約27%,最下位の得点から約27%を取って,上位群をG群,下位群をP群として分析を行なうことからG-P分析good-poor analysisとよばれることもある。しかしより一般的には,テスト得点の高い者順にたとえば四つか五つのグループに分け,中位の群についての情報も含めて検討される。これは上位の群ほど正答の選択肢を選んだ人数が多くなり,中位の群や下位の群の選択率を合わせて見ることにより,その項目がどのあたりで仮定された心理学的特性をよりよく識別できているかを検討できるからである。なお,選択肢ごとに上位群と下位群の正答率をそれぞれPL,PUとしたとき,その差PU-PLを弁別指数discrimination indexとよび,項目としてテストに組み込むためには少なくとも0.2程度以上が必要とされる。
多肢選択形式のテストの場合,誤答となる選択肢を迷わしdistracterとよぶ。迷わしの選択率はいずれの選択を取ってもほぼ均等で,かつ上位群になるほど低くなっていくのが望ましい。しかし,下位群よりも上位群の方の選択率が高い迷わしがある場合には,検討が必要である。
〔柴山 直〕
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