宮沢賢治の童話。生前未発表。1924年(大正13)ごろ書かれた『風野又三郎』を土台に『種山ヶ原』『さいかち淵(ぶち)』などの初期童話を組み込んで32年(昭和7)ごろにほぼまとめられた。9月1日の朝、山奥の小学校分教場にやってきた転校生高田三郎を、村童たちは風の神の子供「風の又三郎」ではないかと疑い恐れる。授業風景や、日曜に上の野原へ遊びに行き、逃げた馬を追って道に迷う冒険、放課後のブドウ取りや水泳と、日を追ってエピソードが進行するうちに、子供たちの気持ちは、高田三郎を又三郎とみる嘉助(かすけ)と、そうでないとみる一郎の間で揺れ動くが、三郎はまもなく去ってしまう。自然とともに息づくような表現によって地方色豊かに造型された少年文学の傑作。
[天沢退二郎]
『『風の又三郎』(岩波文庫・旺文社文庫・角川文庫)』▽『『銀河鉄道の夜・風の又三郎・ポラーノの広場』(講談社文庫)』
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
…古くから風祭が行われていたことが知られる。〈風の又三郎〉は東北地方でいう妖怪で,新潟県などでいう〈風の三郎様〉とともに,風の神としてまつられる。富山県西部の庄川,神通川,常願寺川の中流地帯は,風の神をまつる〈風神堂〉という小祠が集中して点在している。…
※「風の又三郎」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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